斎藤の死因とされる胃潰瘍とは?
死亡診断書は確認できないが、斎藤の死因とされる胃潰瘍(peptic ulcer)を見てみよう。
胃酸の影響を受け、胃の粘膜に炎症が生じ、粘膜が潰瘍を形成する病態を消化性潰瘍(胃潰瘍と十二指腸潰瘍)と総称する。胃潰瘍は、40歳以降の人に多く、十二指腸潰瘍は10~20代の若年者に多い。
原因は何か? ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が十二指腸潰瘍なら95%、胃潰瘍なら70%とされる。ピロリ菌以外の原因は、非ステロイド性消炎鎮痛薬のアスピリン(NSAIDs:エヌセッド)が多い。そのほか、胃粘膜保護の減少を助長する飲酒、喫煙、塩分、熱い飲食物、ストレス、コーヒー(カフェイン)などがリスクファクターになる。
どのような症状が現れるのか? 上腹部痛は、十二指腸潰瘍では、空腹時や夜間によく起こり、胃潰瘍では、食後30分から1時間後によくみられる。潰瘍からの吐血や下血のほか、むねやけ、吐き気、嘔吐などを伴うことが多い。
胃・十二指腸潰瘍の診断に最も重要な検査は、バリウムによるX線造影検査と内視鏡検査だ。治療は、ピロリ菌の除菌療法の進歩によって1年後の胃潰瘍の再発率は10%、十二指腸潰瘍は5%と低下している。
エヌセッドの服用による胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃粘膜プロスタグランジンを補充するプロスタグランジン誘導体の投与が行われる。胃・十二指腸潰瘍の疑いのある時は、早急に医師の診察を受けなければならない。
このような病態の根拠から、斎藤一の病死を推察すればどうなるだろう?
詳細なデータが不明だが、明治時代から大正時代の男性の平均寿命は43歳前後だ。胃潰瘍の病態がまだ解明されてい明治期に、71歳まで生存できたのはなぜだろう? 遺伝的な気質、武士道に通ずる精神的な形質、飲酒、喫煙、塩分過剰などの生活習慣などが関与していたのかも知れない。