万能インフルエンザワクチンの開発に成功?(depositphotos.com)
インフルエンザが猛威を振るっている――。厚生労働省の発表によると、1月29日~2月4日に全国の医療機関を受診した患者は約282万人(前週比8万人増)にもなると推計され、これほどまでの患者数は、統計を取り始めてから過去最高だという。
日本だけではない。この冬は世界中でインフルエンザ大流行の兆しがある。米国では予測と異なる型のインフルエンザウイルスが流行したため「ワクチンの感染防御効果が限定的である」と指摘されている。
だが、毎年の流行予測に基づき製造されたワクチンを接種する代わりに、幅広い型のインフルエンザに対する「万能ワクチン」を活用できる可能性が見えている。
「A型インフルエンザ」に防御効果のある「万能ワクチン」を開発
米ジョージア州立大学生物医科学研究所准教授のBao-Zhong Wang氏らは、作製したワクチンにさまざまなタイプのA型インフルエンザウイルス株に対する防御効果が認められたとするマウスの実験結果を『Nature Communications』1月24日号に発表した。
ワクチンの接種はインフルエンザによる死亡を防ぐ最も有効な方法だが、ウイルスは絶えず変化するため、流行が予測されるウイルス株に合わせて製造されたワクチンを毎年接種する必要がある。
そのため従来の季節性インフルエンザワクチンは、ウイルス表面にあるタンパク質(ヘマグルチニン:HA)の頭部に結合するように作製される。しかし、頭部は絶えず変化するため、毎年ワクチンの製造の「動く標的」となっている。
発表によれば、Wang氏らは、HAのより深い領域にあり変化しにくいHAの茎の部分を標的とした「ナノ粒子」と呼ぶ極めて微小なタンパク質を用いたワクチンを作製し、マウスに接種。その結果、H1N1型、H3N2型、H5N1型、H7N9型など、幅広いA型インフルエンザウイルス株に対する防御効果が認められた。
ただし、動物の実験で成功したに過ぎないため、さらに研究を重ねなければならない。Wang氏らは、今後はよりヒトに近い呼吸器系を持つフェレットを用いた実験を計画している。そして「茎の部分はあらゆるインフルエンザウイルスに共通するため、さまざまなウイルス株に対して感染防御効果が得られる」と説明している。
また米サウスサイド病院のSunil Sood氏は「万能ワクチンにつながるあらゆる技術が待ち望まれている。例年、主に流行するのはA型インフルエンザなので、最終的にヒトを対象とした試験が成功すれば、インフルエンザの大部分を予防できる」と強く期待を寄せる。