慢性疼痛の苦しみとは? なぜ痛みが慢性化するのか?
慢性疼痛は「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間(3ヶ月または6ヶ月)を超えて持続する痛み」と定義され、プライマリケア受診者の20〜50%の訴えは、慢性痛とされている(日本神経治療学会)。
また、2010年に国際疼痛学会(IASP)は「患者が痛みに対する適切な診療を受けることは基本的人権である」とするモントリオール宣言を採択している。
慢性疼痛の主症状は、心拍数の増加、血圧の上昇、不安、苦痛な表情、疲労、不眠、食欲現象、抑うつ状態、怒りなどだ。では、なぜ慢性化するのか?
慢性疼痛は、末梢組織が傷害される外傷などに伴う急性疼痛から始まる。末梢組織が傷害されると、サイトカインやサブスタンスP(SP)などの神経ペプチドの活性化に伴い、傷害部が炎症を起こすため、肉芽が形成される。つまり、傷害部で線維芽細胞などが活性化し、線維化や瘢痕化するので、瘢痕組織が痛みの発生・維持に関わる場合が多い。
慢性疼痛は、長期間にわたり侵害刺激が加わり続ける「侵害受容性疼痛」、初期の神経障害が消失した後に長期間持続する「神経障害性疼痛」、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在する「混合性慢性疼痛」、痛みの原因となる組織病変が存在しない自発性慢性疼痛、心因性疼痛に分類される。
だが、その発生の機序は極めて複雑のため、完全には解明されていない。先の遺伝子解析が契機となり、1日も早く完治の道筋が見えてきてほしい。
(文=編集部)