最新研究でわかった40代からの<脳育>~「脳トレ」効果は思い込み!?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

②「マインドフルネス瞑想」を生活に取り入れる

 「マインドフルネス瞑想」とは、常に最高のパフォーマンスを引き出すために、近年グーグルやインテル、フォード自動車などの有名企業、イギリス国会でも取り入れられているメンタルトレーニング方法。賛否両論はあるものの、「脳への健康効果」も次々と報告されている。

 「マインドフルネス」とは、いま自分に起きていることに集中してあるがままに受け入れる「心が満たされた状態」のこと。この状態を自然につくるトレーニングとして採用されているのが「瞑想」だ。

 ただし、瞑想といっても宗教的な色合いはなく、忙しい人でも日常の中で簡単に実践できるものだ。

 一定時間止まって寛げる場所ならどこで始めてもOK。半眼か目を閉じた状態で、一定時間自分の呼吸にひたすら集中する。雑念が入ってきてもそのまま受け入れ、継続時間もそのときの気分で決めていい。日々の忙しさからひととき解放され、心地よく寛ぐだけで効果があるという。

 米ハーバード大学医学部を中心とした合同研究チームの報告(2011年)によれば、1日平均27分のマインドフルネス瞑想を2カ月続けた被験者の脳を「fMRI(MRIで脳の血流を視覚化する方法)」で調べたところ、学習、記憶、自己認識の中枢となる海馬部分で灰白質の密度が増加していたという。

 また、同じくハーバード大学の研究で、長い間マインドフルネス瞑想をしてきた人は、感覚入力を処理する大脳皮質領域が厚いことが判明。さらに判断、決定・計画・識別を司る前頭皮質が、加齢で薄くなっていくのを遅らせる可能性も示唆されている。

③ピアノを習い始める

 数ある習い事や芸術活動の中で、最近特に注目されているのがピアノだ。

 脳科学者の澤口俊之氏によると、ピアノは前頭前野の脳間・脳内操作系が司る「HQ=人間性知能」を大きく伸ばす。HQの中心的な機能はワーキングメモリであり、問題解決能力や社会性、創造性などの基礎になるものだ。

 澤口氏によれば、ピアノのレッスンをすると脳の前頭前野が構造的に発達するとともに、左右の脳を繋ぐ脳梁(のうりょう)も太くなり、バランスが良くなる。さらに平衡感覚や思考に関係する小脳や、記憶に関係する海馬の機能も、ピアノの練習総量を増やすほど良くなるデータがある。

 ピアノは他の楽器と違い、右手と左手で微妙に違う指の動きが要求され、さらに譜面を先読みしながら弾いていく。その高度なマルチタスクが、脳全体の機能向上を促すと澤口氏はみている。最近は大人のピアノ教室が人気だが、何歳から始めても脳を成長させる一定の効果が期待できるという。
(参考:「PTNA」今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー)http://www.piano.or.jp/report/04ess/livereport/2015/07/29_20010.html

④「3Dビデオ・ゲーム」をプレーする

 先ごろモントリオール大学(カナダ)の神経学者チームが、ゲーム「スーパーマリオ64」を半年にわたってプレーした55歳以上の人々の海馬と小脳で、灰白質の増加が見られたと発表している。

 実験では55〜75歳の37人の被験者を3グループに分け、第1のグループは半年にわたって週に5日、30分ずつ「スーパーマリオ64」をプレーした。第2のグループは同ペースで「パソコン上でピアノを学び」、第3のグループは何の課題も出されなかった。

 実験前後にMRI検査と認知能力テストを行ったところ、「スーパーマリオ64」グループには、海馬と小脳での灰白質の増加と、短期記憶能力の向上が見られ、特に認知能力の向上はピアノのグループを上回った。

 ピアノのグループでは海馬の灰白質の増加は見られなかったが、小脳と、計画や決断、意志の制御を支配する前頭前皮質での増加は確認されたという。

 ただ、この報告については「被験者が少なく規模が小さすぎる」など、懐疑的にみる研究者も多く、さらなる大規模な検証が必要だ。

 しかし、これまでのほかの研究でも3Dゲームをプレーすることが海馬や小脳を活性化する可能性が示唆されている。これは、3次元の仮想空間の中でキャラクターを動かすことと関連していると考えられている。
 
 いかがだろうか? まだ科学的に確立されたとは言えないが、いずれにも共通するのが「楽しみながら認知機能を向上させることができる」可能性だ。どんなトレーニングでも、長続きしなければ効果は望めない。無理なく、気持ちよく生活に取り入れられる<脳育習慣>をぜひ見つけて欲しい。
(文=編集部)

睡眠障害治療の新たな幕開け!個人に必要な睡眠の「量」と「質」を決める遺伝子を探せ
インタビュー「睡眠障害治療の最前線」後編:筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・佐藤誠教授

前編『『人間の「脳」は7時間程度の睡眠が必要! 本当のショートスリーパーは100人に1人程度!?』』

ひとくちに睡眠障害といっても、さまざまな症状がある。1990年代後半から脳内に眠気を誘う「睡眠物質」を探す研究にスポットライトが当たり、2018年からは睡眠の質と量を決める遺伝子の解析も進められている。今回は睡眠障害について、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の佐藤誠教授に話しを聞いた。

Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

里中高志

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

鈴木龍太

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫