「加熱式タバコは喫煙でない」と誤認している人は17%も
また大和教授は、iQOSの全国販売の開始から8カ月後の2016年12月に、大分県の人口8万人の自治体にある自動車製造業の職員3155人(男性3008人、女性147人)を対象にアンケートを実施した。
集計率は100%で、全男性職員の回答をまとめたところ、1566人(52.1%)が紙タバコの喫煙者、273人(9.1%)がiQOS常用者で、そのうち140人(全男性職員の4.7%)が重複使用者だった。
しかも「加熱式タバコを使用することは『喫煙である』と思うか」の問いに対して、「いいえ」と誤った認識を示した人は17.0%だった。
だが、男女で比較すると、男性が17.4%、女性が8.9%と、男性が女性よりも誤認識の割合が有意に高かった。
同じ質問の回答をタバコ製品の「①現使用者」「②元使用者」「③非使用者」ごとに分析したところ、「加熱式タバコを喫煙であると思わない」の割合は、「①が22.4%」「②が10.2%」「③が6.4%」だった。
産業医科大学の健康診断問診票に限らず、国民健康・栄養調査の調査票などでも、喫煙状況については「紙巻きタバコ」についての質問しかない。
そこで大和教授は、加熱式タバコを喫煙と認識していない人の分だけ喫煙率が過小評価される、という見解だ。加熱式タバコに関しても、独立した設問が必要との考えを示している。
「禁煙の場所で加熱式タバコを使用してよいか」の質問に対しても、「はい」とする誤った認識の回答が16.7%あり、男性の誤認識率が高い。「禁煙場所で加熱式タバコを使用してよいと思う」とする回答は、非喫煙者が10%、元喫煙者が11.3%、現喫煙者が20.6%だった。
加熱式タバコのイメージ戦略が原因か?
加熱式タバコの宣伝には、「部屋の空気を汚しません」といったセールストーク、室内での使用イメージが用いられている。そのためか、禁煙にしている飲食店でも<加熱式タバコは使用可>とする店舗は増え始めているようだ。
大和教授によれば、<加熱式タバコのエアロゾルは室内の照明では見えにくいが、有害なエアロゾルが出ている>とのこと。つまり、加熱式タバコでも受動喫煙に相当する二次曝露が発生する。禁煙の場所では加熱式タバコも禁止すべき――という見解だ(参考:日本肺癌学会)。
煙が見えるか見えないか? ニオイがあるかないか? タバコはクロかシロかグレーか? その判断と行動は個人の自由。
しかし、科学の叡智が解明し、気づかせてくれる厳然たる明白な事実を知るべきだ。疑わしきは選ばず。死のトリアージュをタバコに委ねる愚劣だけは避けたい。
(文=編集部)