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服薬コンプライアンスの悪化は医療経済の破綻を招く

 医療経済は、患者と医療従事者との信頼関係が醸成されなければ成り立たない。一旦、信頼関係が崩壊すれば、患者の服薬コンプライアンスが一気に悪化し、治療費が雪だるま式に膨れ上がる。

 医療費の肥大化を恐れる医療従事者は、過剰な患者監視に走り、患者の信頼感をさらに失う。このジレンマの連鎖を絶たない限り、適正な医療経済は破綻し続ける。

 このような服薬コンプライアンスの悪化をイタチゴッコ(水掛け論)だとか、海の向こうの対岸の火事と笑っていられるだろうか。

 日本の医療保険財政に及ぼす「残薬」という難題が厳然と横たわっているからだ。

 東京薬科大学薬学部の益山光一教授らの研究報告「医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(平成27年度厚生労 働科学特別研究)の中間報告について」を見よう。

 この研究は、日本の医療制度における残薬の現状を把握するために、文献調査や薬局・医療機関調査を実施し、残薬の額や量、発生理由などを明らかにするとともに、残薬を解消するための方策を探求している。要点だけを整理しよう。

 第1点。薬剤師が関与した残薬削減が見込める残薬の額は100億~6500億円と膨大だが、大きな幅がある。この誤差は、残薬調査期間、調査対象(薬剤の種類・年齢層)、調査方法などに原因があるため、標準額を正確に確定できない。

 だが、患者や医療関係者の残薬への意識を高めつつ、薬剤師がさらに積極的に介入すれば、年間数100億~3000億円以上の削減効果が期待されるという。驚くべき巨額だ。

 第2点。さらに残薬を解消するためには、残薬確認後の対応も重要だ。つまり、残薬が生じた理由を精査し、処方を変更したり、残薬を再利用したりすれば、患者のアドヒアランス(執着心)の向上や不要薬の廃棄に繋がるので、医療安全や医療経済への波及効果も期待できると強調している。

 この研究の意義は何か? それは「服薬コンプライアンスの悪化は、医療経済のがんである」という視点に立ちつつ、コンプライアンスからアドヒアランスへの発想転換を提唱している点ではないだろうか。

 つまり、患者は医療従事者の指示に従順であるべきとするコンプライアンス(遵守心)から、患者自身が治療に積極的に参加すれば、治療は成功するとするアドヒアランス(執着心)への発想の変換だ。

 服薬コンプライアンスの原因は、患者だけにあるのではなく、医療従事者や医療環境などにもあることから、患者の人権や心理を配慮した患者志向のアドヒアランスこそが、治療成功のカギを握っているのだ。

 患者にとって適正な治療法は何か? 選択肢はないのか? なぜ実行できないのか? なぜ服薬できないのか? 解決の可能性はあるのか?

 患者と医療従事者が膝付き合わせて話し合い、理解し合い、合意した瞬間に、賢明な治療への道筋が地図のように見えてくるだろう。

 服薬コンプライアンスの悪化がもたらす医療経済の破綻。それは、まさに医療経済のがんと言っても過言ではない。
(文=編集部)

※参考 (「医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(平成27年度厚生労 働科学特別研究)の中間報告について」)。

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