センサー内蔵の「デジタル錠剤」をFDAが承認(depositphotos.com)
米食品医薬品局(FDA)は11月13日、センサーを内蔵した「デジタルメディスン」のエビリファイマイサイト(Abilify MyCite)を承認したと発表した(「HealthDay News」2017年11月14日)。
エビリファイマイサイトは統合失調症などの治療薬として既に承認されている抗精神病薬のアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)に微小なセンサーを埋め込んだ錠剤。大塚製薬と米プロテウス・デジタル・ヘルス社が共同開発した。
エビリファイマイサイト飲み込めば、体内でシグナルを発するので、患者が指示通り薬を飲んでいるかどうかを介護者や医療従事者が確認できる。内蔵されたセンサーは胃液に接するとシグナルを発し、患者の身体に貼り付けたパッチ型のシグナル検出器「マイサイトパッチ」が服薬の日時や患者の活動量などを記録する。
その後センサーは体内で消化、吸収されることなく安全に体外に排泄される。また、専用アプリを使用すれば、スマートフォンなどの端末で服薬状況や活動量を確認できる。患者が許可すれば、患者の家族や介護者、医療従事者もデータを共有できる。
適応はエビリファイと同じで、成人の統合失調症、双極性1型障害の躁病および混合型症状の急性期、大うつ病性障害の補助療法だ。FDA医薬品評価研究センターのMitchell Mathis氏は「精神疾患に対して処方された薬剤が実際に摂取されたかどうかを追跡できるのは、一部の患者にとって有益だ」とコメントしている。
一方、プロテウス・デジタル・ヘルス社最高経営責任者(CEO)のAndrew Thompson氏は「既に銀行取引や買い物、友人や家族とのコミュニケーションなど日常生活でスマートフォンは広く利用されている。FDAの承認によって重度の精神疾患患者が新たな方法で治療チームとともに治療計画を立てられる」とメリットを強調する。
重度の精神疾患患者は、服薬コンプライアンスの悪化がしばしば問題となる。服薬コンプライアンスの悪い患者はさらに重症化しやすく、入院が必要な状態まで悪化するリスクが高いため医療費の増大を招くからだ。「New York Times」によると、米国では服薬コンプライアンスの悪化が原因で年間1000億ドル(約11兆2500億円)もの過剰な医療費が生じていると試算されている。
ただし、一部の医師は「デジタルメディスンを使用する患者が医療従事者などから常に監視されていると感じ、問題が生じる可能性もある」と指摘する。米ハーバード大学医学大学院のAmeet Sarpatwari氏は、New York Timesの取材に対し「適切に使用しなければ、患者が医療従事者に不信感を抱く恐れもある」と話している。