「自殺に関する5つの誤解」
自殺をする人は事前に周囲の人に「何らかのSOS」を出すケースが少なくないことを、今回の研究は改めて裏付けた結果となった。そして、メンタルや健康に問題を抱えている人ほど、その確立は高くなる。
わが国でも自殺動機の約半数を、うつ病をはじめとする健康問題が占めている。リスクの高い人が発する「SOSのサイン」を周囲が見逃すことなく受け止め、対応していくことが自殺防止の鍵となる。
そこで「妨げ」となりやすいのは「自殺に関する誤った認識」だ。日本は自殺が非常に多い国であるにもかかわらず、一般人の間で自殺に対する理解が深まっておらず、ともすれば目を背けることも起きやすい。
東京都福祉保健局・東京都立中部総合精神保健福祉センターのウェブサイトでは「自殺に関する5つの誤解」として、以下の「5つの誤り」をあげている。
①「死ぬ・死ぬ」という人は、本当は自殺しない
②自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている
③未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった
④自殺について話をすることは危険だ
⑤自殺は突然起き、予測は不可能である
まずはしっかり向き合って話ができる環境を整える
自殺した人の多くは、実際に行動に及ぶ前に何らかのサインを送ったり、自殺する意思をはっきりと言葉に出したりして誰かに伝えている。
そして自殺リスクの高い人でも「死にたい」「助けて欲しい」という気持ちの間で揺れ動いており、それが自殺行動にも反映される。そのため自殺未遂に及んだ人は、その後も同じ行動を繰り返し、結局は自殺によって命を落とす確率が高い。
また自殺を話題にしても、「自殺の考えを植え付けることにはならない」。救いを求める気持ちに真剣に向き合うことができれば、「自殺について率直に語り合うこと」は、むしろ危険を減らすことになる。
そして、自殺が突然のように見える場合でも、実は自殺に至るまでには長い苦悩の道程があるのが普通だという。
このように、自殺をほのめかす人の気持ちを正面から受け止めることができれば、命を守る手立ては残されている。最終的には治療にまで結びつけることが理想だが、身近な人がそうした「苦しみ」を口にするようになったら、まずはしっかり向き合って話ができる環境を整えたい。
(文=編集部)