インタビュー「皮膚の色が抜け落ちる白斑の最新治療」後編:榎並寿男医師(新宿皮フ科院長)

白斑(尋常性白斑)は8割以上が改善~最新の「光線療法」「ミニグラフト移植」

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傷も残さず高い改善率を誇る最新手術「ミニグラフト移植」

──ミニグラフト移植とは?

 榎並:頭皮などからメラノサイトがある正常な皮膚細胞を採取し、白斑部に埋め込み移植する手術です。

 従来から白斑部を大きく削り取って、そこに正常皮膚を移植する手術はありましたが、入院を必要とする上、麻酔をしても激しい痛みを伴います。皮膚をとった箇所には傷跡が残るし、移植した部分と正常皮膚との色のマッチもよくありませんでした。

白斑(尋常性白斑)は8割以上が改善~最新の「光線療法」「ミニグラフト移植」の画像2

ミニグラフト移植の前(上)と後(下)

 そこで患者さんの負担にならず、さらに傷が残りにくい手法として考え出されたのが、ミニグラフト移植です。メラノサイトの存在しない白斑部に正常な皮膚細胞を植え込み、それを定着させた後、ナローバンドUVBやメルを使ってメラノサイトを育て、健全な皮膚を取り戻そうという手法です。

──皮膚を「面」で移植するのではなく、正常細胞を「点々」と埋め込むわけですね。

 榎並:そのとおりです。そもそも、光線療法で改善しない患者さんの白斑部には、紫外線に反応する要素がないのだと考えられます。

 畑に「種」がないのに、いくら水をやっても「実」はならないのと同じで、メラノサイトやその前段階の細胞がない白斑部にいくら紫外線を照射しても、「実」に当たるメラニン色素は生まれない。ならば、白斑部に正常なメラノサイトを持つ細胞を移植し、定着させればいいわけです。

 当院で行っているミニグラフト移植では、白斑部に専用のマシーンを使って直径0.6〜1.3mmの小さな穴を開けます。その後、同じように頭皮から正常皮膚を採取します。正常細胞をとった部位、移植した患部ともに傷跡がきわめて小さく、数週間でまったくわからなくなります。

 マシーンで均一に移植するので、移植後の皮膚が凸凹になるようなこともありません。当院では現在、特殊な採取マシーンを使うことで、頭髪を剃らずに正常細胞を取ることもできるようになりました。

 皮膚の定着率は99%以上。早い人では術後1カ月で白斑部の半分以上、3カ月で80%以上、色が出てきます。光線療法単独より、改善効果が早く現れるのもミニグラフト移植の長所です。

 他の治療法で満足な効果が得られなかったかたでも「ミニグラフト移植+光線療法」で改善する可能性がありますから、ぜひあきらめないでいただければと思います。

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 なお、光線療法は健康保険の適用となるが、ミニグラフト移植は自費診療となる。手術は約2時間で終了し、日帰りで行えるとのこと。なお、頭髪を剃らずに正常細胞を取ることができるのは新宿皮フ科独自の手法で「国内はもちろん、世界でも当院が唯一ではないか(榎並医師)」とのことだ。
(取材・文=山本太郎)

榎並寿男(えなみ・ひさお)
1947年、岡山県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業、同大学院修了。1979年より中部地方を中心にクリニックを開く。光線療法に関する研鑽に努め、2006年に東京・市ヶ谷に国内初の白斑専門治療院「市ヶ谷皮膚科 日本白斑センター」を開設。2008年に東京・新宿に移転し「新宿皮フ科 日本白斑センター」と改称。白斑治療に関して国内屈指の実績を持つ。著書に『白斑はここまで治る』『白斑はここまで治るⅡ』(ともにアールズ出版)がある。

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