屋外活動の時間が長いほど近視発症率が低くなる(depositphotos.com)
約50年前から「近視」の人口が世界的に急増している。そしてこのままのペースで増加し続けた場合、2050年には約50億人に達するという予測もある。国連の世界人口推計によると2050年の世界人口は98億人なので、2人に1人は近視になっているということだ。
「世界各国で近視に関する調査や研究は積極的に行われています。日本は近視大国でありながらまだまだこれからという印象ですね」と鳥居秀成医師(慶應義塾大学医学部眼科学教室)は話す。
近視については、人種差がある可能性がある。白人・黒人に比べて黄色人種に多い可能性がある。「特に中国や台湾といった東アジアの国々では、学童の近視の増加が問題視されています。ですからそれらの国々では国全体が危機意識をもって積極的に近視対策に乗り出しているようです」と鳥居医師。
今回は、近視に関する世界各国の研究や取り組みについて紹介する。
両親が近視でも子どもの近視はあきらめてはいけない
鳥居医師は「現在、東アジアの国々では近視が爆発的に増えています」と話す。過去60年間の近視の増加率は、香港では約8倍、韓国と台湾では約4倍というデータがある。増加の勢いはまさに「パンデミック」並みといえる。
東アジアの国々ほどではないが、ヨーロッパやアメリカなどでも近視の人口は増えつつある。「わずか数十年で爆発的に近視の人口が増えているので、この増加の背景には遺伝というよりも環境の変化のほうが大きくかかわっている可能性が高いと考えられます」と鳥居医師。
世界各国での研究で、近視の進行を防ぐ効果があると認められているのが屋外活動だ。近視発症率と屋外活動時間の関連について、アメリカ・オハイオ州立大学が2007年に報告した臨床研究がある。
○両親が近視ではなくても屋外活動時間が1日1時間に満たない場合、片親が近視の場合と同様の近視発症率になる
○両親が近視でも屋外活動時間を1日2時間以上行った場合、両親が近視ではない場合に近い状態まで近視発症率が下がる
つまり、屋外活動の時間が近視発症率を大きく左右している可能性があるのだ。両親が近視だから子どもも近視になるとあきらめてはいけない。
また、屋外活動の時間が長いほど子どもの近視発症率が低くなることが数多くの研究から報告されている。