「強度近視」でも失明する!(depositphotos.com)
近視が進行すると失明するリスクが高くなる……。この事実に「まさか」と驚く人も多いのではないだろうか。
近視については「遺伝によるものだから仕方がない」と本人や家族もあきらめがちだ。また、眼鏡とコンタクトレンズで視力を矯正できることもあり、学校や職場で積極的に予防・抑制に取り組むケースは少ないのが現状だ。
近視を放置しがちな今の風潮に警鐘を鳴らすのが鳥居秀成医師(慶應義塾大学医学部眼科学教室)だ。「世界中で近視の人口が増え続けているだけでなく、失明や視力障害に至る可能性のある『強度近視』の人口も増え続けているのです」と鳥居医師は語る。
鳥居医師が勤務する慶應義塾大学医学部の近視外来には、近視の進行が止まらないだけでなく、すでに強度近視になってしまった子どもも数多く受診するそうだ。今回はさまざまな眼の疾患を引き起こす近視について鳥居医師に話を聞いた。
眼球の<奥行きが伸びて>近視が進む
目をカメラにたとえると、「水晶体」はレンズ、「網膜」はフィルムに当たる。そして、網膜より手前にピントがきてしまう状態が近視である。
近視の主な原因は、「眼軸長」が伸び続けてしまうことである。眼軸長とは角膜から網膜までの、眼球の前後方向の長さだ。目の奥行きである。
この眼軸長が伸びると、目が自然なリラックスした状態の時に網膜より手前で焦点が結ばれてしまい、網膜にはピンボケのような像が映る。これが近視の状態だ。
ちなみに、目はここから、筋肉に力を入れて水晶体のレンズを厚くしてピントを近くに寄せる。近くをずっと見続けていて遠くに目をやったときに一時的に遠くがぼやけるのは、毛様体筋や水晶体がすぐに元の状態に戻らないためで、近視とは異なる。
これまで眼軸長は、子どもの目が成長するとともに伸びて、10~12歳ぐらいで伸長の程度がゆるやかになると考えられてきた。しかし近年、眼軸長の伸張が止まらず何らかの原因で眼軸長が伸び続けてしまうため、世界的に近視の人口が増え続けている可能性があるのだ。
実際に、日本などで行われた臨床研究で、成人以後も眼軸長が伸び続ける人がいることが報告されている。
「私自身、中学生の頃に急に近視になり、その後成人になっても近視が進行し続けました。また、成人になっても近視が進行し続けて困っている方が実は沢山いるということに、私自身が眼科医になって診療を開始してから患者さまの声として感じました。近視の進行は、実は子どもたちだけが困っている問題ではないのです」と鳥居医師は語る。
日本人の眼軸長は平均約23~24 mm程度といわれており、鳥居医師が世話人を務める近視研究会では、眼軸長が26mm以上、または屈折の強さを表す「D(ジオプター)」で、マイナス6Dより強いものを強度近視と定めている。
「C」のようなランドルト環という記号を使って行う視力検査だけでは、強度近視かどうかは判断できない。