延命治療を拒否した日野原重明さんに学ぶ~「あなたらしい最期」を選ぶ方法は?

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多くの人が望む終末期医療は?

 日常生活を健康的に送ることができる「健康寿命」と、実際の平均寿命の差は、平成26年版厚生労働白書によると男性9.13歳、女性12.68歳(平成22年)。つまりその期間は何らかの病気を患っていたり、介護の手が必要となったりすると考えていいだろう。

 日野原医師のように、それまでの活動を休止せざるを得なくなってから亡くなるまでが数カ月というのは極めてレアケースなのだ。

 多くの人が望む医療は、「延命治療で徒らに命を永らえさせる」ことではなく、「生きている間のQOLを高める」こと。医療は、高齢者が「健康寿命」を全うし自然に亡くなっていく方向にシフトすべきではないだろうか。

終末期医療のガイドラインの存在を知らない医師も

 厚生労働省は、すでに平成19年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を出している。

 その中の「終末期医療及びケアの方針の決定手続き」では、患者と医療従事者が十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行なった上で文書にまとめておく、とある。

 患者が意思決定できない場合でも、家族が患者の意思を推定してそれを尊重しながら最善の治療方針をとること、と記載されている。

 あくまで本人の意思ありきなのだが、平成26年の「終末期医療に関する意識調査等検討会報告書」によると、ガイドラインを参考にするどころか、「ガイドラインを知らない」という医師が33.8%、看護師41.4%もいた。さらには、知っていても「参考にしていない」と答えた医療者がおよそ2割いるという。

 これでは、延命治療をしたくないという患者や家族の意向よりも、医師の考える医療方針を優先させることがあっても不思議ではない。

死への備えは早すぎるということはない

 

 「延命治療」自体が悪いのではなく、「自分の意思で医療方針を決定できない」ことが問題なのだ。もちろん、本人が延命治療を希望することだってあるだろう。インフォームド・コンセントが終末期医療にだけは無効という話は納得できないのではないだろうか。

 せめてもの防衛策は、まずは「終末期にはどんな医療が行われているのか知識を得ておく」こと。その上で、家族で話し合って意思確認をしておきたい。死を前提にした終末期医療の話など「縁起でもない」「聞きたくない」などと拒否すると、家族は後悔することになる。

 さらに、自分で判断できなくなる場合を想定して、あらかじめどのような治療を受けたいか、受けたくないかを書面(事前指示書=リビングウィル)に詳細に認めておこう。

 現段階で事前指示書に従って治療をしなくてはならないという法律はないが、本人の意思が明確に示された書面を見たら、医師は全く無視することもできないのではないだろうか。

 高齢者だけの問題ではなく、高齢者のいる家族全体の問題でもある。また、若い世代もいつかは自分に降りかかってくることと心得たい。人の命はじつは儚く、死が訪れる時期も人それぞれなのだから。
(文=編集部)

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