国民皆保険が崩壊したら貧乏人は病院に行けなくなる?(depositphotos.com)
体調が悪くなれば、誰もがいつでも自由に医療機関にアクセスでき、少ない負担で検査を受け、必要な薬を処方してもらえる。すべての国民が何らかの公的な医療保険に加入するという「国民皆保険制度」のお陰だ。
私たちにとっては当たり前のことだが、世界に目を向けるとそうではない。先進国でも「民間保険」中心の国もあれば、「無保険」の国民が多い国も存在する。日本の医療保険制度は非常に恵まれているのだ。
しかし、現在医療の現場で働く医師たちの半数が「この制度は維持できない」と危機感を覚えていることが、最近の調査で明らかになった。
医師の52%が「国民皆保険は破綻する」
これは日本経済新聞と10万人の医師が登録する情報サイト「メドピア」が共同で、全国の医師に対して行った調査によるもの。インターネットを通じて1030人の医師から回答を得た。
その中で「現状の皆保険制度に基づく医療は今後も持続できると思うか」を聞いたところ、「そうは思わない」との回答が539人(52%)に達した。その理由としては「高齢者の医療費の増大」や「医療の高度化」をあげる医師が多かったという。
一方「持続できる」と答えた医師261人(25%)も、多くが「患者負担の増加」「消費税の増税」など、財源を確保できるという条件を追記。どちらにせよ、現状のままでは維持が難しいとの認識が大半を占めた。
国民医療費は1990年度に20兆円を超え、2015年度は概算で41.5兆円。国民が支払う健康保険料と患者負担でまかなえているのはその6割にすぎず、残りの4割は税金などから補填されている状態だ。
しかも政府の推計によれば、2025年度には国民医療費は54兆円に達するという。日々現場を見続けている医師達の危機感は、想像以上に大きい。
対策としては「支払い能力のある人の負担増」「紹介状なしでも受診できる『フリーアクセス』に一定の制限を」という回答のほか、「医療の効率化」「過剰医療を見直すべき」という医療側の意識改革を求める声もあったという。