自動車では子供は必ず「後部座席」に乗せる(depositphotos.com)
子どもを自動車に乗せる時の安全性について、さまざまな誤解があるようです。子どもの場合は、後部座席でチャイルドシートなどを便用した上で、シートベルトをすることが、最も安全性の高い乗車方法です。
先日、ある事故の報道がされました。「母親が運転する軽乗用車が電柱に衝突し、助手席にいた3歳児が死亡、エアバッグが展開した際に強い衝撃を受けた」というものです。
その以前にも、助手席にいた6歳児が衝突事故に遭い、エアバッグの衝撃を受けて死亡――という報道がありました。
このような報道を目にすると、あたかも「エアバッグは危険」なように印象づけられますが、果たしてどうなのでしょう。今回は、自動車に乗車する子どもの安全について考えます。
世界的なコンセンサスは?
わが国の法律によると、6歳未満の子を乗せる時には、チャイルドシートを使用しなければならないことが規定されています。すなわち、子どもを<助手席に乗せてはいけない>とは記されていません。
しかし、米国などでは、子どもは後部座席に乗せること、そしてチャイルドシートだけでなく、12歳頃まではブースターシートと言って座面を高くするシートを使用することなどが定められています。
まず、子どもは後席に乗せること、チャイルドシートやブースターシートを適切に使用すること――これが安全に対するコンセンサス(合意)となっています。その理由について、エアバッグと身体の拘束という両面から説明します。
チャイルドシートが適切に装着されていたのは2~3割
自動車に乗車する時には、シートベルトを適切に着用しなければならないと定められています。これは、きちんと体を拘束し、衝突時に身体が移動するのを防ぐためです。
現在の「3点式」と呼ばれるシートベルトは、鎖骨、胸骨、肋骨、骨盤といった骨格を固定するものです。もし、体格の小さい子で腰のベルトが腹部にかかったら、衝突時に腹部を圧迫するので、内臓や腸管が損傷されます。
この現象を「サブマリン」と呼びます。また、身長の低い子どもがシートベルトを着用すると、肩ベルトが首にかかるので、衝突時に首を圧迫されたら命取りになります。
私たち大人が自動車の前席に乗車する際には、ベルトの引き出し囗にあるベルトアンカーが上下に移動して高さを調整できるため、適切な位置にベルトがフィットします。
しかし、後席ではベルトアンカーが上下に調整できません。身長の低い子が後席でベルトをする際は、体の高さを上げる必要があり、そのために「ブースターシート」を使わなければなりません。
なお、6歳以下の子は、シートベルトが使えるほど成長していないため、チャイルドシートが必要です。チャイルドシートは適切に取り付けられていないと、衝突時にシートごと移動することがあります。
かつて私たちは、チャイルドシートが取り付けられている自動車を専門家とともに確認しました。すると、緩みなく適切に装着されていた自動車は2~3割にすぎませんでした。これでは安全な状態とは呼べません。