シャンプーをやめたことで現れるかゆみは一時的なもの
湯シャンの効果はわかった。しかし、実行するとためらいを感じる。やっぱりかゆくなりそうだ、頭が臭くならないか……いろいろと不安だ。
「普段からシャンプーをしていた人が湯シャンを始めると、一時的に頭皮にかゆみが起こることがあります。シャンプーには主成分である界面活性剤のほかに保湿成分が含まれています。シャンプーを使わなくなると保湿成分の供給が止まり、界面活性剤で障害を受けたバリア機能はまだ回復していないので、頭皮が乾燥してかゆくなるのです。しかし、あくまでも一時的なものです」と池田医師は答える。
「ニオイについては、むしろ少なくなります。シャンプーで皮脂を必要以上に洗い流すと、活発に皮脂が分泌されるようになります。その皮脂にはノネナールという特有のニオイがある物質が含まれています。結果として、ニオイがきつくなるのです」
池田医師は湯シャンを続けて、抜け毛やフケ、加齢臭とは無縁という。
「シャンプーは、ただ髪を洗うというだけでなく、香りを楽しむという要素もあると思います。ですから、『今日はシャンプーを楽しみたい』という日にだけシャンプーを使って、普段は湯シャンにすればいいのではないでしょうか」
湯シャンでは、お湯の温度をなるべく低くするのがポイント。夏なら常温の水道水でかまわないそうだ。また、髪を洗うときとタオルでふくときには、頭皮と髪の毛をこすらないように心がける。
費用が一切かからない湯シャン。フケやかゆみが薬を塗っても治らない、何度も症状を繰り返すという場合は、思い切ってシャンプーをやめてみよう。
(取材・文=森真希)
池田大志(いけだ・ひろし)
皮膚科医。1977年、兵庫県生まれ。2004年、徳島大学医学部卒業。06年4月より、医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンター・亀田総合病院(千葉県鴨川市)形成外科医師となる。08年4月、皮膚科に転科。さまざまな皮膚トラブルを抱えた数多くの患者の治療、スキンケア指導に当たる。亀田総合病院勤務中の10年5〜10月、長女の育児休業を取得。乳腺外科医である妻の職場復帰を支え、育児に専念する。自らの臨床経験、育休中の育児経験より大人も子どもも「洗いすぎるほど皮膚の状態は悪くなる」という事実を確信し、「皮膚のバリア機能を守るスキンケア」の啓蒙に取り組む。15年9月より、医療法人社団躍心会「江北皮フ科」(東京都足立区)の院長に就任。
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。