トラブルの多くは誤解やちょっとしたすれ違いから……(depositphotos.com)
障害者の雇用の門戸は、さらに開かれていくのか――。
厚生労働省は5月30日、従業員のうち一定の割合以上の障害者を雇用することを事業者に義務づける法定雇用率の引き上げを正式決定した。
2018年4月に現行の2.0%から2.2%に、さらに20年度末には2.3%まで引き上げることも決めた。
これは改正障害者雇用促進法が2018年4月に施行されるのに伴い、従来の身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者の雇用も義務化されることを受けての措置でもある。
「三障害」のなかでは企業の受け入れが遅れていた精神障害に関しても、これから働く機会がさらに増えていくのであれば、喜ばしいことだ。
実際、統合失調症やうつ病といった精神疾患に関しては、症状が落ち着けば薬を服用することで十分働けるようになるケースも多い。その際、無理な残業をさせない、体調の悪化には早めに対処するなど、少々の配慮が勤務を長続きさせる手助けになる。
精神疾患を隠して一般就労すると、体調が悪化したときにその理由を正直に上司に伝えられず、無理が重なり体調を崩してしまうことがある。その意味からも、最初からハンデを理解してもらった上で雇用される障害者雇用は、就労の安定という上で大きな意味があるのだ。
一方で、障害者雇用の現場はいいことばかりかというと、もちろんそのようなことはない。障害者の雇用にあたっては、結果的に雇用側と働く側の関係がうまくいかなくなり、働く障害者に対して雇用者が困惑しているケースもある。
そんなきれいごとではない障害者雇用の現場の事例が多く紹介されているのが、日本で初めて障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」の書記長を務める久保修一氏が書いた、『本書を読まずに障害者を雇用してはいけません!』(労働新聞社)だ。