予防治療は長期的には医療費や介護費を増大させる可能性が……
健康寿命を延伸させるための施策に力を入れる都道府県は多い。
静岡県は「治療法」よりも「予防」に重点を置いた新しい学問分野である「社会健康医学」の基本構想検討委員会の事業費に2500万円を計上(2017年度当初予算)。
震災の余波もあって健康寿命調査(2013年)の結果が「男性41位/女性35位」とふるわない福島県は、5年後の2022年に「男女とも全国10位以内入り」の目標をかかげたロードマップを策定したばかりだ。
健康寿命という概念は2000年にWHOが策定したもの。日本人は2013年の時点で、男性の「平均寿命80.21歳」で「健康寿命は71.19歳」、女性の「平均寿命は86.61歳」で「健康寿命は74.21歳」。いずれも、その開き(期間差)が「男性で約9年」「女性で約12年」もあるのだ。
となれば、予防医療にいっそう力を入れ、病気の早期発見や早期治療で国民医療費の抑制につなげようと考えるのは当然の理……。しかし、前述した「社会健康医学」ではなく「医療経済学」の立場から見ると、「多くの予防治療は長期的に医療費や介護費を増大させる可能性を含んでいる」ともいわれる。
大雑把に言えば、禁煙対策で寿命が延びた分、生涯の医療費負担が増える可能性だってあるし、メタボ検診も同様であり、適度な運動とバランスのとれた食事の推奨さえ、「それで非健康生存期間が短縮されるのか?」という観点に立てば、医学的根拠は薄弱……。
そんな、なんとも身もふたもないトホホな逆説的な考察もあるのだ。
前出の大規模な国際調査で、2030年生まれの女性の平均寿命が「90歳超え」の見通しで1位に輝いた韓国。その原因を調査陣は、「①幼年期の栄養状態が良好」「②低い喫煙率」「③医療への好アクセス」「④最新医療の知識・技術」としている。
国同士の距離も近ければ健康環境面でも相似していそうなものだが、この日韓の差異はなんなのだろうか? その解明から「健康寿命」の期間差問題の解消に向けたヒントも見えてくるかもしれない。
(文=編集部)