今度は働く「パパ」にも嫌がらせが!
しかし、それがまんざら絵空事だといえないのが現代社会の近未来感だ。というのも、最近、じわじわと被害実態が呟かれだした「パタハラ」なる4文字表現が水面下でのイクメン窮地を象徴しているからに他ならない。
パタハラとはマタハラと対をなす如く、子育てを母性(マタニティー)に任せるばかりではなく父性(パタニティー)の側からも積極的に参加しようというイクメン(=男性従業員)の意思に立ちふさがる職場内の空気――その諸々の嫌がらせを総称して「Paternity Harassment」、略して「パタハラ」と呼ぶ。
内容はいうまでもなくマタハラ類似の男性版だが、部下の申請に対して「奥さんの役目だろ」「出世に響くぞ」「勝手にしろ!」など、旧態然の子育て観や男尊女卑思考の上司弁が異口同音に返されるのが特徴なんだとか。
父親の子育てといえば昨年、男性国会議員初の育休取得宣言から一転、妻が切迫早産で入院中に別の女性と不倫をしていた宮崎謙介元衆院議員のニュースが記憶に新しい。この<ゲス育休議員事件>は、世のイクメンへの理解を大きく後退させたといわれる。
日本労働組合連合会のパタハラ調査(平成26年発表)では、「職場でパタハラをされた経験がある=11.6%」「周囲でパタハラにあった人がいる=10.8%」という結果が出た。
内訳としては、「子育てのための制度利用が認めてもらえなかった(5.5%)」とか、「制度利用をしたら嫌がらせをされた(1.9%)」などの実相が浮き彫りにされた。
セクハラもマタハラも流布の当初は「(深刻な問題なのに)響きが軽すぎないか?」と思ったりもしたものだ。しかし、なんでも4文字に簡略化してしまう日本人特有の軽妙さが、憂慮すべき水面下の事態をたちまち世間に知らしめ、<浸透→定着→改善→廃絶>に機能するプラス面も侮れない。
今度は「パタハラ」かいな、よし、皆でメモれ、コピれ、そして語りまくれ――。
(文=編集部)