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トランプ大統領就任で米国の医療制度は? 「オバマケア」から「トランプケア」への移行は茨の道?

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オバマケアからトランプケアへの移行は茨の道?

 ただ、トランプ氏は強かに動く――。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、2016年11月10日のオバマ大統領との会談で再考を促され、すでに多くの国民がオバマケアに加入済みであることから、混乱を避けるために、保険会社が加入者の既往症を理由に加入を禁止する条項と、26歳未満の子どもを両親が加入する保険対象に含める条項は守るとほのめかした。

 しかし、すぐに翻意する――。11月29日、トランプ氏は、保健福祉長官にオバマケア廃止論者のトム・プライス氏を指名。オバマケアの廃止や代案検討が加速する可能性がますます濃厚になっている。

 トランプ氏がオバマケアに大幅な制度変更を行えば、オバマケアによって設立された健康保険市場(エクスチェンジ)が消滅し、貧困層向けの公的保険であるメディケイドの拡大にも影響が及ぶ。その結果、約2200万人が公的健康保険を失うとする推計もある。

 さらに、トランプ氏の 制度変更によって大幅な財源不足に陥り、2018年には政府は約400億ドル(約4兆8800億円)の損失を抱えると試算されている。

 このように、オバマケアからトランプケへの制度変更がどのようなリスキーな事態を招くかは推測の域を出ない。

オバマケアを全面的に撤廃できないのはなぜ?

 しかし、トランプ氏はオバマケアを全面的に撤廃することができない理由がある。

 なぜなら、トランプ氏は新しい法案を自分の意志で通せない。今回の選挙の結果、上院は共和党51議席、民主党48議席になった。トランプ氏が民主党の協力を得ずにオバマケアを廃止するには、少なくとも60議席が必要になる。

  共和党の全議員が支持しても、60議席に達しないので、強行採決はできない。もちろん、上院の民主党議員はトランプ氏を支持しないし、民主党は議事妨害によって時間切れに持ち込めば、トランプ氏の法案を廃案に追い込める。

 つまり、トラ ンプ氏がオバマケアを全面的に撤廃する法案を提出しても、上院は可決できない。大統領は拒否権を使って上下院 を通過した法案を拒否できるが、大統領が提案した法案を上下院に通す権限はない。

トランプ氏は奥の手を巧みに使い、オバマケアを骨抜きにする?

 ところが、トランプ氏にも奥の手がある。最高裁判事や各省庁のトップなどの政府高官の指名権だ。最高裁判事は保守派とリベラル派が半々であったが、トランプ氏の躍進の影響で、保守派に有利な形勢に持ち込めるだろう。

 医療政策はどうか? トランプ氏は、米保健福祉省(HHS)や財務省の長官などの指名権をもつので、強力な人事権を行使すれば、医療政策を間接的だが意のままに牛耳れるかもしれない。

 トランプ氏の奥の手はまだある――。財政調整(Budget reconciliation process)という裏技だ。すでに成立した法律のうち、予算に関わる条項だけを変更する政策手法、それが財政調整というリーサルウェポン(奇策)だ。上院の過半数の51議席があれば、オバマケアを大幅に変更することが事実上可能になる。

 ただ、予算に関わらない条項は財政調整でも変更できない。たとえば、既往症がある理由による保険加入拒否を禁止する条項や、不健康な人への高額な保険契約を禁止する条項はそのまま守られる。

 しかし、このような伝家の宝刀を抜けるトランプ氏も、決して安穏として居られない。 上院の共和党議員がすべてトランプ氏を支持する保証はない。ジョン・マケイン議員なら法案の内容によってはトランプ不支持に翻ると言われる。共和党は51議席なので、2人の共和党議員が反旗を翻すだけで、トランプ氏は財政調整にすら手が出せない。トランプ政権は砂上の楼閣のように危ういのだ。

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医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

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フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

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小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

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