禁煙に成功したボンドに「副流煙」の魔の手
2015年のシリーズ最新作『スペクター』が典型例で、主役であるボンドの影響(効果?)なのか、主な仲間たちももはや喫煙はしていない。だが、他の登場人物による「副流煙」がいまだに描かれている。
「この007シリーズでは喫煙場面の減少傾向が見られた。それでもこのシリーズの変わらぬ人気ぶりを鑑み、公衆衛生的観点から見れば、いまだに喫面が続いて描かれていることには問題があるだろう」(Wilson氏)
実際、アメリカ国内に限っても、10~29歳に対して「タバコを印象づける」シーン閲覧の視聴数が2億6100回を弾き出しているとか。時代や地球レベルの趨勢で「禁煙派」が主役の座を得ても、「愛煙家」という脇役に憧れる向きが完全にいなくなるわけでない。
ご存じのとおり日本の場合、世界保健機構(WHO)の評価基準によれば、受動喫煙対策やメディアの脱タバコ・キャンペーン、あるいはタバコの販売・広告・後援の禁止項目において、高所得国の中で「最低レベル」の汚名を頂戴している。
ボンド禁煙15周年の今日でも、厚生省がサービス業の「屋内原則禁煙案」を掲げれば、飲食店業界が「客離れで廃業の恐れがある」と反対を表明し、それを嫌煙派は「時代に逆行」「意味がわからん」と無視論を投稿する混乱状況は変わらない。
007作品に『死ぬのは奴らだ』というタイトルがあったが、たばこの場合「奴ら」の範疇は喫煙者本人のみならず、副流煙で「皆殺し」のリスクも伴うというのに……。
(文=編集部)