なぜ日本人は初詣が好きなのか?最新の脳神経科学が解明した 運命論か自由意志論かの大論争!

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なぜ日本人は初詣が好きなのか?何を求めて参拝するのか?

 このように考えを深めると、初詣は知情意に深く関わっているように感じられる。

 知性的には、ご利益期待、家族安泰、健康祈願の志向が強い。感情的には、苦しい時の神頼みという直情的な依存願望が滲み出る。だが、意思的には、世間の慣習を踏襲していたい、集団行動に乗り遅れたくないという庶民の群集心理が濃厚かも知れない。

 ただ、群集心理と言っても、バンドワゴン効果が起こす人気ラーメン店に並んでしまう行列心理や、クリスマスやお正月が近づくとワクワクするクリスマス症候群とは明らかに違う。

 なぜ日本人は初詣が好きなのか?何を求めて参拝するのか?

 神社や寺院というハレの異空間で身を清める。玉砂利を踏みしめる。神仏の前で二礼二拍手一礼しつつ瞠目して合掌する。お賽銭を神妙に投げ入れる。おみくじ、お守り、破魔矢の縁起物を買い急ぐ。絵馬に願いを込める。これらの行為は、祈りの浄化願望、癒しの希求表現のように見える。

 宗教的な信仰心や哲学的な観念の有無は関係がない。神前・仏前でただ癒されたい、穢れを正したい、初心に立ち返りたい、災を退ける幸運にあやかりたい。そこには快楽原則が求める知情意のバランス感覚が潜んでいる。祈りが秘めるヒーリーングと至福感をひたすら願って手を合わすのだ。

 このような快楽・癒し・至福感に身を託す初詣の心理と行動を裏づける、脳神経科学の仮説がある。

 たとえば、心理学者のダニエル・ウエグナーは、伝統行事、しきたり、風俗・風習などは、世間より先行しなければという圧迫感や、人並みに同調しておきたいなどの心理的な錯覚を与えやすく、社会的に受け入れられることを期待するあまり、自発的行動を促しやすいとする。この見解に立てば、初詣は、社会的動物である人間が陥る一種の錯覚的現象とも考えられる。

 また、脳神経学者のアントニオ・ダマシオが提唱するソマティック・マーカー(身体信号)仮説がある。この仮説は、感情的な身体反応が理性に働きかけ、意思の決定に重要な信号を送るため、その処理に脳の前頭前野が重要な役割を果たすとする。

 前頭前野は、人間の思考や創造性を担う脳の最高中枢センターだ。前頭前野は最も遅く成熟し、最も早く衰退する。ワーキングメモリー、反応抑制、行動の変換、推論などの他、高次な情動に基づく意思決定、社会的行動、葛藤の解決などに深く関わっている。

 この前頭前野の働きによって感情的な身体反応が理性に働きかけ、意思決定を左右する時がある。つまり、先述した通り、ご利益期待、家族安泰、健康祈願の志向が強まれば、苦しい時の神頼みという直情的な依存願望が高まるので、初詣という行動につながるとも解釈できる。

 さて、冒頭の運命論か自由意志論かの大論争は決着していない。自分の自由意志を確信して生きれば、人生を変えられる。自分の自由意志で決定すれば、希望に満ちて生きられる。なぜなら、それこそが快楽・癒し・至福感を求めて止まない人間の本質だからだ。

 ちなみに、『わたしは脳に操られているのか』(エリエザー・スタンバーグ)によれば、人間は自分の存在(脳)と世界の存在の関係性を主観的に構築しながら生きている。つまり、自分の存在(脳)と世界の存在が互いに影響し合い、補い合っているのは自明な事実であるという認識をもつ。この自明性こそが、自由意志で生きる人間のロバストネス(強靭さ)を示す何よりの証拠だろう。

 さて、初詣は正月の三が日に参拝する人が多いが、1月中でも構わない。ノーリツが実施したアンケート(2006年12月)によると、初詣に毎年行く人は70歳以上が59.1%、20歳代が44.4%。20歳未満の75%はほとんど行かないらしい。初詣で繰り出す人は全国で延べ9373万人(2006年初詣参拝者総計)とか。

 なぜ初詣に行くのだろう?行かない人がいるのは、なぜだろう?2017年もよい年でありますように!
(文=編集部)
 


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