中高年の女性に急増中の「肺マック症」とは?(shutterstock.com)
結核は、1950(昭和25)年まで日本人の死亡原因の第1位。ストプレトマイシンが発見され、適切な治療法が開発されてからは、患者数は減少する。結核のほとんどは、「肺結核」とされる。
ところが、「肺マック症」という感染症が中高年女性に急増しているという。2000年を境に、結核の患者数と「肺マック症」の患者数が逆転しているのだ(2016年11月28日/テレビ朝日『グッド!モーニング』)。
結核は、現在でも日本で年間約1万8000人以上の新患者が発生し、約2000人以上が死亡する重篤な感染症だ(厚生労働省平成27年結核登録者情報調査年報)。日本は、いまだに結核の中蔓延国に甘んじている。
世界に目を転じても、世界人口の3人に1人が感染、年間約380万人が発病し、約150万人が死亡している(WHO, Global Tubercurosis Roport,2015)。結核撲滅の道はまだ遠い。
中高年女性に多い「肺マック症」の発病率は日本人10万人当たり14.7人
肺マック症は、 肺非結核性抗酸菌症と呼ばれる温かい水中や土壌中をはじめ、家畜の体内、水道・貯水槽などの給水システムなどに広く生息する抗酸菌属細菌のマック菌(Mycobacterium-avium complex)が土ぼこりや水蒸気に付着して肺に侵入して発症する。
発病すると、気管支の壁や周囲が慢性炎症によって充血するため、咳や痰が1か月以上続き、やがて血痰が出る。10~20年もかけてゆっくりと重症化するので、慢性の発熱、重い全身の倦怠感を伴い、体重が激減する。マック菌が肺の組織に深く浸潤し、肺が空洞化(穴が開いた状態)するため、やがて呼吸困難に陥り、死に至るリスクが強まる。
「肺マック症」の発病率は、日本人10万人当たり14.7人。年間の患者数は推計約12万人、死亡者数1300人以上に上る。人から人への感染はないが、致死率は決して低くない。
「肺マック症」は、咳や痰の初期症状の進行が穏やかなうえ、症状が風邪によく似ているので、気付きにくく、発見が遅れがちになる。治療は、薬剤で進行を遅らせるが、完治は望めない。新薬は日本と米国で治験の段階に入っているが、実用化にはまだ時間がかかりそうだ。
なぜ「肺マック症」は増えているのだろう?
現在の住宅は機密性が高く、特に冬の室内は加湿や部屋干しによって多湿化しているのも一因だ。室内の適切な湿度は50~60%。料理中や入浴後などに約10~15分間程度、換気すれば多湿はかなり改善されるだろう。