さてまじめに龍角散に使われている生薬の効果を見ていこう。
「キョウニン(杏仁)」はウメによく似たアンズの種子。主産地は、東北地方、長野県、山梨県。アミグダリンという青酸配糖体が体内で分解すると、微量の青酸を生じるため、呼吸中枢、咳中枢を鎮静させ、喘息、咳、呼吸困難に効く。多量に服用すると中毒症状が起こる場合がある。また、脂肪油が腸の蠕動運動を活発にするので、便通を解消する働きもある。
「キキョウ(桔梗)」は日当たりのいい草地に自生する秋の七草のひとつ。日本各地、朝鮮半島、中国北東部に分布する。主成分のサポニンは、気道粘液の分泌と泡立ちを促すため、痰が出やすくなるが、多量に飲むと吐き気を催す。また、水溶性食物繊維のイヌリンは、腸内の善玉菌の増殖を促し、便通をよくする働きがある。
「セネガ」は北アメリカ原産でヒメハギ科の多年草。先住民族のセネガ族がガラガラヘビに咬まれた時の応急処置に用いたが、痰を取る作用が発見されて欧米に普及。北海道、京都府、兵庫県で栽培されている。
主成分のトリテルペンサポニンは、キキョウと同じ粘膜刺激作用があるので、気道粘液の分泌を促し、強い去痰(痰を取る)効果がある。
「ニンジン(朝鮮人参)」は、古来、万能薬として活用されている。ウコギ科のオタネニンジンの根を天日乾燥して使う。主産地は、長野県、福島県、島根県。強壮作用が強いニンジンサポニンは、新陳代謝の促進、精神安定、中枢神経の興奮、免疫力の強化の働きが優れている。
その他、抗炎症、抗菌、抗胃潰瘍の他、疲労防止、疲労回復、抗ストレス、老化防止など多くの作用がある。
「カンゾウ(甘草)」はマメ科の多年草。中国からヨーロッパ南部に分布。サポニンの一種であるグリチルリチンは、咳止め、抗潰瘍、抗アレルギー、抗炎症の作用の他、免疫力や肝機能を高めるため、強い解毒作用やがんの予防効果がある。また、フラボノイドは、咳止めや利尿作用が強い。
「アセンヤク(阿仙薬)」はマラッカ海峡沿岸が原産。アカネ科のガンビールの葉や若枝を乾燥させ、水に浸した水製エキスを使う。主産地は、マレー半島付近の諸島やインドネシア。
口腔清涼剤にもなる水製エキスは、小腸の蠕動運動を抑さえ、盲腸の逆蠕動運動を促すため、下痢止めや整腸作用が強い。また、フラボノイドは抗血栓作用、アルカロイドはがんの増殖を抑制する働きがある。
「マオウ(麻黄)」は、中国東北部からモンゴルの原野や砂地に分布するマオウ科の小低木。茎を日陰乾燥して使う。アルカロイドの一種のエフェドリンは、気管支筋を弛緩させるので、咳止め、抗アレルギー、解熱、鎮痛などの作用があり、喘息や百日咳に効果が高い。
また、交感神経を興奮させるため、発汗、血圧上昇、解熱、抗炎症の働きもある。エフェドリン塩酸塩として治療にも使われている。
気になる龍角散の副作用は?
以上のように、天然の生薬に秘められた驚異の薬効は、目を見張るが、副作用はないのだろうか?
何事も過ぎたるは及ばざるがごとしだ。カラオケの声がれに使う人も少なくないが、多量に摂取すれば、吐き気、嘔吐、食欲不振、胃腸障害などの副作用が生じる場合がある。
薬も毒に転じるのは、いうまでもない。必要な時だけ適量を服用したい。体調が思わしくない場合は、すぐに服用をやめよう。
また、空気が乾燥する冬、風邪やインフルエンザの予防対策として、のどの健康管理は欠かせない。低温と乾燥によって鼻やのどが乾くと、自浄力や抵抗力が低下する。外出から帰ったら、必ず手を洗い、うがいを励行しよう。暖房で室内の乾燥を防ぐために、加湿器を活用することも大切だ。
春夏秋冬、あなたも、たん・せき・のどあれ・こえに効く龍角散をキメる!?
(文=編集部)