漫然とした使用には注意を!
一方で、PPIではリスクが上昇したが、H2ブロッカーでは上昇せず、他のリスク因子で調整後も変わらなかった。ただし、今回の研究では、これらの薬剤と脳卒中リスク上昇との直接的な因果関係は確立できず、関連性を示したに過ぎない。
これの結果についてスィーイステズ氏は、「PPIは血管維持に重要な生化学物質の濃度を低減する可能性がある」とコメントしている。
実はPPI、近年に新たな副作用の可能性が次々と指摘されている。今年、米医学誌『JAMA Neurology』(2月15日発行)では<認知症になる危険性が高まる>と報告された。
ドイツ神経変性疾患センターのブリッタ・ヘーニシュ氏らは、認知症のない75歳以上の高齢者約7万人を対象に調査を実施。その結果、<PPIの服用者は、服用していない人と比べ、認知症になる危険性が1.4倍高かった>という。
他にも、「慢性腎臓病」にかかる危険が高まることを、米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院のベンジャミン・ラザルス氏らが米医学誌『JAMA Internal Medicine』(2016年)で報告している。
PPIの一般的な商品には、オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブなどがある。いずれもポピュラーな薬で、服用している人も多い。
前述のスィーイステズ氏は、「PPI使用者は多いため、たとえわずかなリスクの上昇であっても、考慮すべき問題といえる」とした上で、その漫然とした使用が広がっている現状に「PPIの処方には、その必要性や使用期間を十分考慮すべき」との見解を示している。
服用のリスクを避けるには、食生活やライフスタイルを改善する努力も求められそうだ。
(文=編集部)