AIへの信頼が強まれば、医師はどうなる?
AIが医師の仕事を肩代わりする時代が来るのだろうか? 沖山氏はこう述べる。
「人が何を求めているかで決まる。たとえば、スタバのサービスを自動化すれば、コーヒーの値段は下がる。だが、客が求めているのは女性スタッフがカップに“ニコちゃんマーク”を描いてくれる愛嬌だ。AIが人の感情に寄り添ったり、人との触れ合いを自然にできるようにならない限り、医師の存在価値は揺るがないはずだ」
だが、沖山氏は、人間の意識がAIの正確さや精巧さを信頼するように豹変すれば、状況は一変すると指摘する。
「5年前は、無人タクシーは怖くて乗れなかったが、大手メーカーが自動運転市場に一気に参入して以来、世間の常識は覆った。このようなブレークスルーを、AIが医療現場に巻き起こす可能性は十分にある」
医師はどうするべきか。沖山氏は答える。
「機械やAIの進化は、人間の予測に反して、指数関数的に超急速に起きる。そのスピードに惑わされてはいけない。大切なのは、医師が綿々と体得してきた高度なスキル(専門性や汎用性)をベースにしながら、「患者という人間を診る」という人間ならではの知性や感性を積み上げていくことに尽きる」
AIが医師を診療室や病院から追い払う日が来るのか? まだSF映画のハプニングであってほしい。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。