高齢化やがん検査機器の普及も一因?
人間ドックで「異常なし」と判定される人の割合が毎年減っている原因には、偏った食生活や運動不足など不健康な生活習慣の広がりとともに、景気の低迷、経済環境の悪化などによる<ストレスの増加>などが指摘されている。
ところが「受診者数の増加」と「高齢化」も大きな要因だ。
人間ドック受診者が増加したのは、2008年からメタボリックシンドロームの考え方に着目した特定健診・特定保健指導が全国で開始されたことが背景にあるのではないかとされる。
さらに近年は、何度も受診する人の割合が70~80%を占め、その結果、受診者の平均年齢が40代から50代へと移行。60歳以上の受診者も年々増加している。それに対して40歳未満は2007年前後を境に減少傾向にあるという。
がんの発見が増えてきた理由としては、男性についてはPSA(前立腺特異抗原)検査が1995年に導入されたこと、女性については乳房のエコー検査やマンモグラフィーといった画像検査が普及してきたことが挙げられる。
「死亡が多いがん」の早期発見には一定の効果
一方で、ポジティブな面もある。
2015年は6つの生活習慣病関連項目のうち、「高コレステロール」「高中性脂肪」「肝機能異常」の3項目で「異常」と判定される人の割合が2014年よりも下がったのだ。高コレステロールは50歳未満で、高中性脂肪と肝機能異常は全年齢層で改善していた。
専門家は「健康意識の高まりに伴う生活習慣の改善が、今回のデータに表れたのではないか」と分析する。
また、日本人の死亡数で上位を占める胃がんの8割、大腸がんの7割以上は、早期の段階で見つかっており、9割以上が手術を行っている。
さらに大腸がん手術のほとんどは開腹をせず、内視鏡で病巣を切り取る手術で済んでいることなどから、早期発見・早期治療という2次予防に人間ドックのシステムが有効であることを示している。
住民を対象とした「対策型がん検診」は特定臓器に限定しているのに対し、人間ドックは「個別型がん検診」で、オプション検査を含めて全臓器を対象とした「総合型検診」であるという特徴がある。
そうしたことから、家族にがん患者がいるなどがんのリスクが高い人の健康チェックは、多少の自己負担をしてでも人間ドックを選択したほうがよいと言えるかもしれない。
「自分は若いからまだ必要ない」と考えるなかれ! 40歳未満受診者で集計しても「異常なし」と判定された人の割合は13.5%に過ぎない。そのことを踏まえて、定期的なチェックと生活習慣の見直しを心がけたい。
(文=編集部)