全がん協部位別臨床期別5年相対生存率トップ5
かつて、がんと言われたら「余命何か月ですか?」と聞き返す、がんが致死の病だった時代もあった。しかし現在がんにかかっても早期発見、早期治療により、がんを押さえこんで、生きていける時代になった。
全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の5年相対生存率を見ると、前立腺がんや甲状腺がんの初期なら100%、結腸がんの初期なら99.1%。5年相対生存率とはがんにかかった人が5年後に生きている確率を、がんにかからなかった場合の期待生存確率で割った数字であり、100%なら、がんにかかってもかからなくても寿命が変わらないということ。がんで死なない時代になってきたことがよくわかる。
しかし第1期から第3期までなら5年相対生存率100%の前立腺がんですら、病院にかかったのが第4期の場合、55.7%といきなり5年相対生存率は下がってしまう。第1期なら5年相対生存率99.1%とほぼ100%近い結腸がんは、第2期は85.7%、第3期は78.5%、第4期はなんと14%にまで下がってしまう。そして全症例と手術した症例を比べると、手術症例の5年相対生存率はぐっと上がる。前立腺がんの場合、全症例の5年相対生存率が95.1%であるのに対して、手術症例は100%。
生き残るためには早期発見して、早期に適切な治療を受けることが欠かせない。だが考えてみてほしい。たとえば健康診断で「再検査」と言われ、「めんどくせえ」と思いながら、なんとか仕事をやりくりして、ようやく再検査に出向き、その結果、「がんです」と言われたとき、あなたは即日治療開始、即日入院することができるだろうか? 勤め人だって仕事の引継ぎがある。自営業なら自分が休む間どうするか、手配に大わらわだろう。そして治療費など金の問題に頭を悩ますことになる。
●がん保険はしばしば支払ってもらえない
「がん保険に入っているから、がんになっても大丈夫」と思っている人は少なくないだろう。しかし、このがん保険が意外に役立たない。
「それはがんではありません」
いわゆるがんが「悪性新生物」と呼ばれるのに対して、粘膜のような上皮内に留まっているごく初期のがんは「上皮内新生物」と呼ばれ、かつてのがん保険では「がん」とはみなされなかった。「上皮内新生物」は、まだ上皮細胞と間質細胞(組織)を境界する膜(基底膜)
を破って浸潤していない腫瘍(癌)を指す。浸潤していないので、転移がなく、完全切除すれば完治することから、保険ではがんと区別されている。
がん保険に加入したのが一昔以上前の場合、「上皮内新生物」ではがん保険は適用してもらえない。最近のがん保険は「上皮内新生物」でも保険が支払われる保険が増えたが、給付金の金額が通常のがんの1/10などと抑えられている場合が多い。部位によっては、初期の「悪性新生物」と「上皮内新生物」は共存していて、必ずしも2つを明確に区別することができないのに...。
「通院だけでは保険金はおりません」
通院給付金がある保険であっても、あくまで入院を前提としているがん保険が少なくない。その場合には特定の日数以上の入院をした後、ときには入院前に通院すると、通院給付金が支払われるが、日帰り手術などで済んで入院しなかった場合、あるいは入院日数が短かった場合には、通院しても通院給付金が出ない。
さらにがんと診断されたときに支払われる「がん診断給付金」も、「医師によってがんと診断確定され、主契約のがん入院給付金の支払われる入院を開始した時」が支払い条件のがん保険もあり、その場合、入院不要で外来受診だけなら「がん診断給付金」も支払ってもらえない。
「支払いは1回だけです。」
多くの保険では「がん診断給付金」の支払いは1回だけ。たとえば「上皮内新生物」と診断されて、1/10の金額のがん診断給付金を1回支払われたら、転移して、より深刻ながんが見つかったときには支払ってもらえない。
「50グレイ未満の照射なので、放射線治療の保障はされません」
がんの治療と言えば、「手術療法」「化学(薬物)療法」「放射線療法」の3つが三大療法と呼ばれ、治療の中心だ。以前はがんの治療における放射線治療では、50~60グレイの照射が行われていた。60グレイが上限とされるのは、それ以上の照射を行うと、がんを撃退する以前に人体のほうが放射線で参ってしまうから。
現在、医学の進歩により、50グレイより少ない被ばく量で治療効果をあげられることが増えてきた。少ない被ばく量で済むなら少ないに越したことはない。放射線治療の副作用は、場合によっては人が変わると言われるほど、きついことも多いのだから。しかし、多くのがん保険の契約には総線量が50グレイ 以上照射された場合にのみ放射線治療に対する給付がされるという契約条件がつけられている。現在の標準的治療では、保険が適用されるべきがん治療とはみなされないのだ。