ラベル表示よりも<洗う動作>が決め手
一方、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)としては「感染症の発症・拡大を予防するという意味では、水と石鹸での手洗いも最善の方法の一つである」と冷静にコメントし、手洗いができない状況下では「アルコールを60%以上含有する除菌剤を使用すること」を勧めるという無難な見解を述べていた。
しかし、今回のFDA発表は、対象の石鹸類を「抗菌効果なし」と明解に斬り捨て、販売中止を突き付けたのだから、その対応は迅速だ。
もっとも、その米国への追従速度では人後に落ちないのが、わが国の安倍政権だろう。9月2日の米国報を受けて僅か5日後の7日午後、菅義偉官房長官は「日本においても同様の成分を含む商品の確認を早急に実施し、とるべき措置について検討を行なってゆく」と記者会見上で述べた。
厚生労働省によれば、問題のトリクロサンを含有する「薬用石鹸」の類いは、広く国内でも流通している。同省では今後、FDA見解(=措置)の根拠とされる研究報告などを精査しつつ、国内で販売中の対象品の種類や範囲を調査するという。
前掲の記事でも、特に印象に残っているのが、米レノックス・ヒル病院(NYC)のRobert Glatter氏が端的に語った次の助言だ。
「手洗いにおいて最も肝心なのは、時間をかけてゴシゴシ洗うという単純かつ機械的な動作です。特に細菌や汚れが溜まりやすい爪のなか、指のあいだに注意することが大切です。それは除菌剤や石鹸などを使う場合も同様で、最低20秒以上は手を擦り続けるのが賢明でしょう」
肝心なのは動作のほう、同氏はもしかしたら「薬用も大差(=効果)ないよ」と言外に示唆していたのかもしれない。米国追従の政府表明は迅速でも、そこから先は、やれ審議会がどうのこうのと検討段階で<亀の速度>になる役人方である。
今後の国の措置がどうであれ、今回の石鹸報に仰天された方はまず、「薬用」「除菌」「殺菌」「抗菌」などへの表示信仰を自ら洗い流してみてはどうだろうか。それらの売り文句よりも、肝心なのは手洗いの基本的な動作をおろそかにしないことだ。
(文=編集部)