このままでは2050年に世界の5人に1人(約10億人)が失明か?
このような症状について、東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授の高橋現一郎医師は次のように解説する。
「これは『暗順応』という現象です。よく映画館や劇場などの暗い場所に入った時、一時的に視界が見えなくなったり、次第に見えてくる現象と同じです。人の眼には明るさに反応する細胞と、暗さに反応する細胞がそれぞれあり、<一過性スマホ失明>は後者に関連したものです」
ただし、この症状は「病気ではない」と高橋医師は指摘する。
「この暗さに反応する細胞は『退色』と言い、一時的に反応しない(見えない)状態になりますが、次第に回復して暗い場所でも見えるようになっていきます。この暗順応はあくまでも生理的なもので、病気ではありませんし、スマホを見続けた際に限った話というわけでもないです」
なので「一過性(スマホ)失明」と命名されたのだろう。
しかし、一方で豪州のブライアン・ホールデン視聴覚研究所が概算した、次のような衝撃的な数字があることも知っておきたい。
今から34年後の2050年を迎える頃、人類は地球人口の半数にも相当する約50億人が「近視」となり、そのうちの5人に1人(約10億人)は「失明リスク」にさらされるだろう――。これがデジタル三昧世代の未来像だと警鐘を鳴らしているのだ。
推計上では、16年前の2000年時点で世界の近視人口は約14億人(地球人口比で22.9%)、そのうち1億6000人が失明の要因のひとつとされる「強度近視」だったという。50年間で22.9%から49.8%の急増は、やはり無視できないデジタル文明の悪影響だろう。
高橋医師も、以下のように助言する。
「今回の話は、本当の失明につながるものではないが、自身が実際に体験したらきっと驚かれるでしょう。この暗順応に限らず、スマホやタブレットを暗い部屋で長時間使用すると、近視の進行や眼精疲労につながる。できるだけ明るい場所で姿勢よく、休憩を入れながら使用することを勧めます」
ここまでを無意識の片目状態で読んだアナタは、一枚目のイエローカード。この習慣を改めないと「一過性失明」に見舞われるかもしれない。
(文=編集部)