40代から年1回の検診を行うべき
40代を過ぎると、目が疲れやすくなったり、近くの物が見づらくなったり、目の悩みが多くなる。最近はスマホやPCの使用時間も増え、特に疲れやすくなった気はしないだろうか。目の酷使だけではなく、加齢とともに涙の分量や質が低下するため、ドライアイが悪化する人も少なくない。
目の見えづらさを「歳のせい」と放っておくと、失明の危険性もある病気が潜んでいることがある。よく知られているのは、白内障、緑内障、加齢黄斑変性症、網膜剥離だ。中でも網膜剥離は、かなり進行するまで自覚症状が少ないので注意が必要だ。
2月26日、民主党の岡田克也代表は去年12月に患った左目の網膜剥離が再発したため、東京都内の病院に入院し、緊急手術を受けた。岡田氏は昨年12月に網膜剥離の手術をして年明けに退院したばかり。今回も同じ左目だった。
網膜剥離を患う著名人は少なくない。女優の樹木希林さんが網膜剥離で失明したのは有名だ。2014年だけでも、アイドルグループNMB48の須藤凜々花さん(17)、プロ野球の山本昌投手(49歳)、お笑いコンビのウーマンラッシュアワーの中川パラダイスさん(32)が網膜剥離の手術を受けた。
網膜剥離は、ボクサーなどの目に衝撃を受ける人だけに起こる特別なものではない。若者から高齢者まで幅広くかかる一般的な病気だ。しかし、網膜が剥がれる前に発見し、手術することで失明という最悪の事態は回避することができる。
自然治癒しないため、治療には手術が必要
目の中は、硝子体(しょうしたい)という透明なゼリー状のもので満たされている。だが、網膜に穴(網膜円孔)や裂け目 (網膜裂孔)ができると、その水分が網膜の下に浸み込んでいき網膜がどんどん剥がれていく。
人間の目はよくカメラに例えられるが、網膜剥離はフィルムにあたる部分の網膜(10層構造)が9層目の視細胞層と一番外側の10層目の色素上皮細胞層で剥れてしまう病気だ。網膜剥離になると、視細胞は色素上皮細胞層からの栄養の供給が途絶え、その部分が見えなくなり、剥離が拡大すると視野欠損の範囲も広がる。
自然治癒しないため、治療には手術が必要だ。視細胞には再生能力があるので早期に治療し、網膜の位置が戻れば完治する。しかし、黄斑と呼ばれる部分が剥れると、著しく視力が低下して失明に至る。早期治療でも目の機能の回復が困難になる。
網膜剥離には、裂孔原性(網膜にあいた穴が原因)と非裂孔原性(糖尿病網膜症など)がある。 一般的にいわれる網膜剥離とは、裂孔原性のことを指す。
網膜剥離になる前であれば、レーザー治療だけでほとんどが完治する。まだ剥がれていない部分にレーザーを照射してくっつけ、進行を止めるのだ。
だが、網膜剥離に至ると「網膜復位術」と呼ばれる手術が必要になる。剥がれた部分を、眼球の外側からつける「強膜バックリング手術」と眼球の中からつける「硝子体手術」だ。どちらが適しているかは、その部位や剥がれ方によるが、近年では硝子体手術の進歩によって、こちらを用いる症例、医療機関が増えている。