自律神経失調症に対する治療では「背骨」へのアプローチで大きな効果が現れる!?

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自律神経失調症治療のポイントは背骨(shutterstock.com)

 自律神経失調症の患者数が増加し、症状を改善する枕などの売り上げが好調らしい。発症はストレスや過労の他にさまざまな要因が考えられているが、その治療方法としては自律神経調整薬、運動・食事指導、東洋医学的アプローチなどさまざまだが、決定打が無いといわれる。

体のさまざまな不調のサインが出現しやすい背骨

 この領域に新たなアプローチを試みる治療者がいる。そのケアのポイントはずばり背骨だ。

 「背骨は身体を支えている大黒柱のようなもの。この背骨は周りの筋肉によって支えられているが、20歳を過ぎると徐々に老化し、背骨の部分に何らかの変性が生じると、周囲の筋肉に無理が生じ、固くなったり、こわばったりし、さらに緊張が続くと内臓やメンタルにも不調をきたしやすくなります」そう語るのは神楽坂ホリスティック・クーラの石垣英俊院長。

 自律神経失調症によくみられる症状としては冷え、めまい、耳鳴り、頭痛、立ちくらみ、吐き気、動悸、情緒不安定、うつ状態、冷や汗、下痢・便秘などがあるにもかかわらず、検査では体に異常がないと診断される。このため“ドクターショッピング”を繰り返してしまうケースも少なくない。

 2014年に『痛みと不調を根本から改善する背骨の実学』(池田書店)、2015年に『背骨、骨盤、足から治す腰痛の実学』(前同)、この6月には『背骨から自律神経を整える ねじるだけで体と心が変わっていく!』(清流出版)を上梓。背骨からのアプローチを前面に押し出した独自のケア理論を提唱している。

「初めて来院する方で多いのは肩こりや、腰痛、首や足の痛みなど。しかしほとんどの不調はその部位だけではなく、他に問題があったりメンタルや内臓の働きを含むトータルなバランスが崩れていたりする。そうした不調のサインが出現しやすいのが背骨です。なかでも背骨の胸椎を含む〝胸郭〟に特に注目しています」と石垣院長。

 この部分をケアすることで多くの不調が改善される症例を多く見てきたのだという。

胸椎と肋骨で構成される“胸郭”と肩甲骨がポイント

 ここで背骨についての少し説明が必要だ。背骨は一つ一つの骨「椎骨」が26個積み重なって一本の柱(脊柱)を形成している。首の後ろにある「頸椎」が7個、胸の後ろの「胸椎」が12個、腰周辺の「腰椎」は5個、その下の「仙骨」、「尾骨」を加えて26個になる。そして、椎骨と椎骨の間にあるのが背骨をスムーズに動かし、衝撃を吸収してくれる「椎間板」という軟骨。

背骨のうち胸の後ろにある胸椎とぐるりと囲む肋骨でできる鳥かごのような部分全体が胸郭だ。さらにこの部分の背中側に肩甲骨が位置する。

「胸郭は心臓や肺、肝臓など重要な臓器を守っている部分。自律神経のうち交感神経の主要な中継所が連なる幹が胸椎の前から肋骨のつなぎ目あたりを通っていることは一般的にあまり注目されていないように思います。また、胸郭の動きの制限や姿勢の問題が、内臓のはたらきというものを通して自律神経に影響していくということも考えられます。つまり、どこか内臓に問題があると、自律神経の反射を介して、背中やその周辺に反応が現れやすいのです。」と石垣院長。

 では、こうした多くの不定愁訴の改善のためにはどうしたらいいのか?

呼吸法と簡単なエクササイズで治癒反応が現れる

 石垣院長が実践する方法はさほど難しくない。「例えば 胸郭が固くなっている人には 自律神経へのアプローチとして腹式呼吸と胸式呼吸の両方を行なう〝連続呼吸〟を勧めています。腹式呼吸で横隔膜を意識し心身をリラックスさせ、次に深い胸式呼吸で肋骨を広げると、胸郭全体が動き、交感神経と副交感神経のバランスが整うからです。緊張しすぎていたり、疲れて過ぎていると、無理にリラックスしようとしてもできないことが多いのです。だから、あえて交感神経にはたらきかけながら、自律神経にアプローチしていきます。」

 さらには背骨の緊張を解きほぐすために、まずは自らの体の部位の可動域を知るためのセルフチェックと簡単な数種類のエクササイズが用意されている。最もベーシックで代表的なものが身近な壁を使って背骨の主に胸椎をねじるストレッチ〝ウォール・ツイスト〟だ。普段の生活の中で、胸椎は背骨の中でも一番動かさない部分なのだという。

 自律神経の乱れの原因や不定愁訴の内容はあまりにも多様だ。石垣院長は多くの施術経験の積み重ねから背骨の重要性にたどり着いた。そこには、自律神経とは遠い存在のように思える中医学や、背骨と呼吸を中心に体を動かすヨガ、さらにはカイロプラクティックの理論が大きなヒントになっている。

 しかし、と石垣院長は言う。「わたしは研究者ではないので科学的なエビデンスにはあまり深入りはしません。まずは、目の前の患者さんと向き合い結果を出していきたいと考えています。もしかすると将来的にはこういった経験が、ヒントを研究者に与えられるかもしれないし、僕が研究者になることもあるかも分からない。現状では、個人差があるものの同じような部位に似たような問題が起きている人に同様のアプローチをすると、やはり一定の治癒反応が得られる。再現性がある程度あると考えています。もしかするとプラセボかもしれません。ただやらなければ何も変わらないし、プラセボも非常に大切なものだと考えています。」

 なにより本書で最も言いたかったことは、ちょっとしたストレスや天気などをきっかけに起きてしまう自律神経の失調を、なるべく起こさないように、あるいは起きても回復しやすくなるように、発症の閾値を高めていくことができるし大切なんだ、ということだという。

 器質的な問題はきちんとした医師の診断と治療が必要だが、内臓や筋肉・骨格の機能障害を改善するということから、感覚や神経系を介して自律神経の失調を改善していく。こうしたアプローチもまた考慮すべき改善策の一つかもしれない。
(文=編集部)

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石垣英俊(いしがき ひでとし)
静岡県生まれ。神楽坂ホリスティック・クーラ代表。一般社団法人日本ヘルスファウンデーション協会理事。セラピストカレッジ「ナーチャ」校長。鍼師、灸師、按摩マッサージ指圧師、オーストラリア政府公認カイロプラクティック理学士(B.C.Sc)、応用理学士(B.App.Sc)。中国政府認可世界中医学薬学連合会認定国際中医師。全米ヨガアライアンス200h修了ヨガインストラクター。日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ教師。東西の智慧を独自に融合させた新メソッド「アラウンドセラピー」を主宰。


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