>  >  >  > ドッペルゲンガーが見える「カプグラ症候群」
シリーズ「病名だけが知っている脳科学の謎と不思議」第10回

自分や家族が偽者の〝そっくりさん〟と入れ替わったと妄想する「カプグラ症候群」とは?

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カプグラ症候群の原因は何か?

 カプグラ症候群の妄想の対象は、人物だけでなく、場所、物体、時間などに対しても起きる場合があることから、当初は知覚障害や錯覚ではないと考えられていた。

 だが、1970年代以降、器質要因を重視する仮説が現れ、知覚障害や相貌認知障害として解釈する学説が優勢になる。大脳の右半球(右脳)や前頭葉の病変との因果関係が指摘され、カプグラ症候群を神経学や認知心理学のスタンスから解明する学説が有力になった。

 カプグラ症候群の真因は何か? 諸説あるが、妄動型統合失調症、脳血管性認知症、パーキンソン病をはじめ、てんかん、前頭葉や側頭葉の器質的障害、頭部外傷、脳梗塞、脳腫瘍、糖尿病、偏頭痛、思考障害や被害妄想障害など、多種多様な病徴や病態が主因になると推定されている。

 カプグラ症候群は、知っている人物を知らない人物(替え玉)と思い込む障害だ。だが、知っている人物が知らない人物に変装して自分を騙そうとしていると妄想するフレゴリ症候群(フレゴリの錯覚)もある。カプグラ症候群に変装妄想・被害妄想が加わった障害だ。1927年に精神科医P.クールボンとG.フェイルが症例を発見した。

 最近は、カプグラ症候群・フレゴリ症候群・相互変身症候群・自己分身症候群の4つの症候群を総称して「妄想性人物誤認症候群(Delusional Misidentification Syndrome)」と呼ぶ場合が多い。

 さて、先のムーラン夫人の「そっくりさん幻想」にいつの間にか幻惑されてしまったが、ジャン・マリ・ジョゼフ・カプグラは、その後どうなったのか?

 第二次世界大戦直後、消息不明になっていたが、5年後の1950年、急性の精神障害に陥り、63歳で急逝する。皮肉にも死の床は、永年勤続し、夥しい精神病患者を見届けた精神病院「メゾン・ブランシェ(白い家)」だった。

*参考文献/『アルツハイマーはなぜアルツハイマーになったのか 病名になった人々の物語』(ダウエ・ドラーイスマ/講談社)など


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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