子どもの糖尿病が増えている!(shutterstock.com)
米国の10代の若年者における糖尿病または糖尿病前症の有病率は、これまでの予測を大幅に上回っており、その多くは自分が糖尿病であることに気づいていないことが、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」7月19日号に掲載の論文で報告された。
調査したのは民間調査機関「米Social & Scientific Systems社」。2005~2014年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のうち、空腹時血糖値を測定した12~19歳の若者2,606人のデータを無作為に抽出して解析した。
糖尿病の有病率はこれまでの推定値の2倍
研究を主導したAndy Menke氏はいう。
「対象者のうち62人が糖尿病をもち、このうち29人が糖尿病であることに気づいていなかった。糖尿病前症の有病率は18%で、女子よりも男子で高かった」と。
2,600人強の10代の若年者のうち、糖尿病有病率は約1%、糖尿病であった若年者のほぼ3人に1人は未診断、対象のうち約20%は糖尿病前症であること。それに加え、これまで推定されていた0.34%という有病率の約2倍である0.8%という結果が出たことも合わせて判明した。これは各種因子を調整したことによるという。
今回の研究では糖尿病を1型、2型で区別していないが、過去の研究では、若年者の糖尿病患者のうち87%が1型と報告されている。一般的に、未診断の糖尿病患者は2型であることが多く、その典型的な症状には頻尿や喉の渇き、(脱水による)体重減少、空腹感、目のかすみなどが挙げられる。「これまでの研究によると、若年者では1型、2型ともに増加している」と、同氏は指摘している。
未治療の糖尿病は、心疾患や循環器疾患、失明、下肢切断などにつながるため、糖尿病診療では早期発見・早期診断が重要課題とされている。
自己免疫疾患で予防できない1型糖尿病に対し、生活習慣因子が強く関連する2型糖尿病の予防には、「高リスクの若年者への疾患教育と生活習慣因子の修正、スクリーニングの向上が必要になる」と、同氏は強調している。
日本における若年性糖尿病の事情はどうか。
日本ではかつて、1型糖尿病は、若年性糖尿病や小児糖尿病の同義語として使用されてきた。1型糖尿病の発症が圧倒的に若年層に多いためだ。しかし、大人での1型糖尿病の発病もあるため、若年性糖尿病や小児糖尿病と同義語として使用されることは少なくなってきた。
1型糖尿病の原因ははっきりしていないが、免疫機序の異常によって発病し、インスリンの分泌がなくなってしまうタイプだ。主に生活習慣が原因で引き起こされる2型糖尿病とは違い、ある日突然発症し、すぐに重症化するケースもある。
小学生では1型、中学生では2型増加
米国の調査をそのまま日本に当てはめることができない点として、1型糖尿病の発病には人種差があり、欧米人に比べて日本では著しく少ない点がある。
しかし、日本の動向で注目すべきは小学生では2型糖尿病に比べて1型糖尿病のほうが多いにもかかわらず、中学生になると2型糖尿病の比率が高くなっている点だ。
これに関しては、砂糖が大量に入った清涼飲料水を毎日飲む「ペットボトル症候群」をはじめ、生活習慣病的な要素が若年化しているためとの分析がある。
「小児性慢性特定疾患治療研究事業」による調査によると、年によってばらつきはあるが、登録者数はだいたい6000~8000人程度。ただし、不登録者が2000~3000人いることから、20歳未満の糖尿病患者数は概ね1万人程度(1型2型を含む)と推定される。[1型糖尿病[IDDM]レポート2011]より。
今回発表されたレポートに関して、米モンテフィオーレ臨床糖尿病センター(ニューヨーク市)所長のJoel Zonszein氏は、「若年者の糖尿病有病率がこのような高い値であることは憂慮すべき事態だ」と述べている。
米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)によると、2型糖尿病のおもな原因は過体重や肥満であり、糖尿病リスクが高い人では体重の5~7%を減らすことで発症を予防したり、遅らせることができるという。また、予防には、1回30分以上の中強度運動を週5日行うことやカロリー摂取の制限を継続することなどが推奨されている。
糖尿病は決して大人だけの病気ではない。
(文=編集部)