義援金も「収入」なのか?
もっとも、義援金は即座に「収入」とみなされる、というわけでは決してない。受給者が義援金の使途と金額を書き込んだ「自立更正計画書」を福祉事務所に事前に提出すれば、「収入」から控除される仕組みが用意されている。
今回の報道を受けて、東京都内で東日本大震災の被災者の支援を行なっている東京災害支援ネット(とすねっと)は、ブログで次のように手続きのルールを紹介している。
「義援金が生活保護受給者の『収入』に認定されてしまうかのような誤解を与える見出しの新聞記事がありましたが、ちゃんと手続きを取れば、義援金等が収入認定されてしまうことにはならないはず」
義援金や見舞金はすべて受け取る手続きをしたうえで、被災状況を書いた書面を作り、その大体の使い道を書いた「自立更生計画書」を手書きでもいいから作って、福祉事務所などに提出すればよいと指南している。
世間の厳しい目も一層萎縮させている
実際、東日本大震災に際しても厚生労働省は通達を出している。
それによると、「被災した生活保護受給世帯が義援金などを受けた場合、その世帯の自力更正のために充てられる額は収入認定されません。また、地方自治体の判断により、包括的に一定額を収入認定除外とするなど被災者の実情に応じた弾力的な取り扱いができることとしています」とのこと。
その件に関する関係通知として、「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」が平成23(2011)年5月2日に出された。
「義援金等の生活保護制度上の収入認定の取り扱いは、(中略)『当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額』を収入として認定しないこととし、その超える額を収入として認定すること」としている。
ただし、煩雑な「自立更生計画書」の手続きを、書類の作成の苦手な人が多い生活保護受給者が敬遠して諦めるケースも発生しそうだ。
そして、受給者を一層萎縮させている可能性があるのが、「生活保護受給者が義援金など受け取るべきではない」という世間の厳しい目だろう。
「収入」に関しては、わずかなアルバイトでも保護停止につながることを恐れて、かえって社会復帰が遠のく問題など、以前から指摘されている。
今回の義援金の受け取りをめぐる問題は、生活保護制度に対する根本的な課題を問うている。
(文=編集部)