気温も低く、汗もかきにくい冬のほうが、夏よりも体臭は気にならなない? いやいや、そんなことはない。暖房で部屋をあたため、通気性も悪くなり、そのうえ、厚着のため汗が衣類に染みつきやすい冬のほうが、体臭がキツく感じる人が多いというデータがある。
マンダムが20~59歳の男女889人を対象に「冬のニオイに関する意識調査」を実施。ニオイケアの実行率は、男性は夏場で80.7%、冬場で65.6%。一方、周囲の男性の体臭が気になった女性は77.9%、男性は67.9%と多い。男性の体臭が気になった場所は、電車やバスなどの交通機関72.8%、オフィス内(デスクまわり)50.5%、エレベーターの中41.4%。冬場は暖房の効きすぎや厚着などで汗をかきやすいことから、人が密集する場所やオフィスなどの密閉化した空間は、体臭がニオイやすい。
男性がニオイケアをしない理由は、自分の体臭が気にならない52.9%、冬は汗をかきにくい40.5%。一方、男性の89.2%は、冬場でも暑いと感じて汗をかいている。また、男性の55.9%は、コート、マフラー、ニット帽などに体臭を感じているが、3人に1人はシャツを2日以上着替えないし、5人に1人は肌着を毎日は着替えていない。
ニオイケアを実行している男性は、20代は72.1%、30代は68.7%、40代は63.1%、50代は58.6%。ニオイケアの意識が高い男性は、20代は50.4%、30代は53.5%、40代は39.6%、50代は37.8%。年代が上がるほどニオイケアの実行率も意識も低下する。上司や同僚に指摘しにくい悩みのベスト3は、体臭、口臭、鼻毛だった。
体臭は自分では気づきにくい。他人の体臭に気づいて不快感を感じても、なかなか相手に伝えにくい。指摘しにくいし、指摘されたくない。指摘すれば、人間関係にヒビが入る恐れもあるが、ガマンするのもストレスが溜まり辛い。スメルハラスメント(スメハラ)は悩ましい難問だ。
皮膚常在菌が汗、皮脂、垢を酸化・分解して体臭になる!
そもそも体臭とは何か? 体臭・加齢臭の治療で知られる五味クリニックの五味常明院長によれば、体臭は「汗の臭い」「加齢臭」「足の臭い」「頭の臭い」「口臭」「ミドル脂臭」の6種類に分かれる。
体臭の一番手は、汗の臭い。皮膚には、皮脂を分泌し、潤いを与える皮脂腺と、汗を分泌し、体温を調整する汗腺がある。分泌された皮脂や汗は、ほぼ無臭。だが、時間の経過に伴って、約1兆個もの皮膚常在菌(表皮ブドウ球菌、アクネ菌、マラセチア菌、黄色ブドウ球菌など)が皮脂や汗を酸化させる。
つまり、体臭は、皮膚常在菌が汗、皮脂、垢に含まれる脂質・タンパク質・アミノ酸を酸化・分解して発生させた揮発性成分だ。揮発性成分は、数百種以上あると言われている。
汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類ある。エクリン腺は、ほぼ全身に分布し、サラサラとした無色・透明・無臭の汗を分泌する。エクリン汗は99%が水。微量の塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム、乳酸、アミノ酸、尿酸などを含んでいる。
一方、アポクリン腺は、主に腋、乳首、鼻翼、外耳道、へそ、肛門、性器などの周辺に分布し、乳白色で粘性がある汗を分泌する。アポクリン汗は、水のほか、タンパク質、脂質、脂肪酸、糖質、鉄分、尿素、アンモニアなど独特の臭いの成分を含んでいる。アポクリン汗の臭いは、異性を惹き寄せる動物学的なフェロモン(生理活性物質)の臭いだ。ワキガの原因成分でもある。
では、冬に体臭がきつくなるのはなぜか?
冬は、運動量や水分摂取量が減るため、汗をかく機会が少なくなる。汗腺は、汗をかかなければ、発汗機能が衰えるので、夏のような汗をよくかく季節に比べて、塩分などの濃度が高い汗を分泌する。さらに、冬は厚着をすることから、衣服内の通気性が悪くなり、汗が蒸れて皮膚常在菌が繁殖しやすくなるので、体臭が残りやすくなる。