四十九日を待たずの快挙報!
さまざまなタイプのある貧血のなかでも最も質が悪く治りにくい病とされる再生不良性貧血は1972年、厚生労働省によって特定疾患(=難病)に指定された。かつて重症者の1年後の生存率は70%という時代もあったが、その後の骨髄移植や免疫抑制療法によって80%前後の重症者が5年以上も生きられるまでに治療法も進歩してきた。
再生不良性貧血の原因には、生来の遺伝子異常による<先天性>と、何らかの損傷で造血幹細胞が機能減少した<後天性>の2種があり、ファンコニ貧血と人名でも呼ばれる前者は極めて稀な疾患例だ。
また、後者の80%が原因不明、残り20%が放射線や化学薬品、ある種の抗生物質やウィルスなどが原因と考えられてきた。
が、再生不良性貧血が実は<自己免疫疾患>ではないのか、というのが最近の新説。本来はウィルスらの外敵を攻撃する役目(免疫機能)のリンパ球が何らかの原因で狂い、あろうことか自らの造血幹細胞を攻撃し始めたのでは!?
免疫抑制療法の根拠がこれである。
一部報道によれば、久美子さんも病名を告げられた際、「余命5年」との宣告を受けている。それが1993年時点だから、宣告の4倍強の歳月を頑張られた計算となり、この間の医療の進歩と効能が前掲の「よくここまで生きてくれた」という言葉の背後にも読み取れるだろう。
同時に「いつも痛みに耐えながらの辛い日々だったと思います」と葛西選手は妹の闘病の歳月を述懐。遺影の中で微笑む久美子さん、その手には“レジェンド”と人々から称賛される兄がソチ五輪で獲得した銀メダルと銅メダルが握られていた。
「ソチのメダルを見せられたことが一番嬉しかった」と、兄妹間の想い出を口にした葛西選手。今回のギネス5冠達成も、四十九日前の快挙報だ。
遠征先での訃報から死に目にあえなかった兄妹ではあるが、きっと故人も喜んでいることだろう。レジェンドの挑戦は終わらない。
(文=編集部)