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シリーズ「『あくび』と『いびき』と『しゃっくり』の科学」第2回 

いびきは病気なのか? 睡眠時無呼吸症候群では高血圧、心臓病、糖尿病のリスクファクターにも

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 いびき(鼾)は、健康にどのような悪影響を及ぼすのか? 

 いびき(鼾)は、雑音を立てる迷惑千万な難物だが、当人が酸素不足に陥る恐れがある。いびき(鼾)をかいている時は、血中の酸素濃度が正常時の約70%に低下するため、脳や心臓への血流が低下し、高血圧や心臓病などを起こしやすくなる。就寝時に突然死するリスクもある。

 さらに、血中の二酸化炭素が排出されないので、血液が酸性化し、インスリンの分泌機能が落ちるため、血糖値(血中のブドウ糖の濃度)が高まる。その結果、糖尿病に罹りやすくなる。

 急にいびき(鼾)をかき始めたり、吸気時だけでなく呼気時にもかき出したり、毎分15回以上の早いテンポのいびき(鼾)に変わったり、いつもと音が違うなどの変化があれば、要注意。当人は気づかないので、回りの家族などが知らせるべきだ。

 いびき(鼾)をかく日本人は、約2000万人という調査データがある。毎晩かいたり、かく頻度が高い人は、男性の20%、女性の5%。このうち、およそ10〜20%が睡眠時無呼吸症候群(SAS/スリープ・アプニア・シンドローム)だ。その患者数は約200万人と推定されるが、診断率は低く、患者のおよそ85%以上が未診断だ。

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸(10秒以上の呼吸の停止)による酸欠状態が1時間に5回以上発生し、昼間の眠気など様々な症状を伴う疾患。無呼吸は、息を吸っても上気道が吸い寄せられて閉じるために、息が吸えない状態をいう。

 いびき(鼾)をかく習慣がある人が肥満になって罹るケースが少なくない。肥満になると、上気道軟部組織に脂肪が沈着し、扁桃が肥大する。巨舌症、鼻中隔彎曲症、アデノイド、小顎症などを発症し、上気道筋の活動低下などが引き金になって罹りやすくなる。

 無呼吸のいびき(鼾)は、健康ないびき(鼾)とどう違うのか? 無呼吸のいびき(鼾)は、無呼吸状態が30秒〜2分間以上もストップした後、あえぐような激しい息を変則的に繰り返し、呼吸を再開する場合が多い。かたや、健康ないびき(鼾)は、1~2分の規則的な周期で強くなったり、弱くなったりする。

 無呼吸のいびき(鼾)が続くとどうなるのか? 無呼吸になると、脳は脳幹網様体や視床の非特殊核に高頻度に電気刺激を与える。その結果、無呼吸から身を守る覚醒反応が起き、上気道を拡げる指令が筋肉に送られ、睡眠から覚醒へ移行するので、呼吸できる状態になる。だが、睡眠中に覚醒反応が高頻度に起きると、とぎれとぎれの質の悪い睡眠障害を招く。

 つまり、長い時間眠っても熟眠感がないため、起床時に頭が重い、昼間も眠気が強い、集中力が欠けるなどのほか、夜間の尿量・回数が多くなる、夜間発汗が続く、性欲が低下する、幻覚を生じるなど症状を伴う。特に著しい日中傾眠(昼間の眠気)は、交通事故や災害事故につながったり、社会生活や家族関係を阻害したりする。居眠り運転による交通事故率は、無呼吸でない人のおよそ7倍だ。恐い!

 さらに、無呼吸のいびき(鼾)は、酸欠状態が内臓に負担をかけるので、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などの重篤な合併症の強い誘因になる。ちなみに、睡眠中の無呼吸による酸欠状態が1時間に20回以上発生し、5年間放置すると10%以上の人が合併症に罹るというデータがある。実に恐ろしい! いびき(鼾)が異常な頻度で出たり、心身の不調が続けば、医師の診断を必ず受けてほしい。

 蛇足だが、「口に鼻」と書いて「嚊(かかあ)」と読む。なぜか? 「かあちゃんは口を大きく開けていびき(鼾)を立てるからだ!
(文=編集部)

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