検視官は、死因を調べるために検視解剖を行う。検視解剖は、犯罪に関わる疑いがある死体を解剖する司法解剖と犯罪性の低い死体を解剖する行政解剖に分かれる。
検視解剖は、死者の身元確認、死因の特定、死因の種類の判別、死亡状態の推定、死亡推定時刻を判定する。検視解剖の結果、検視官は司法解剖するか、行政解剖するかを判断する。だが、犯罪の関与が不明の変死体の場合は、代行検視に移る。
代行検視とは、刑事訴訟法229条に基づいて、検察事務官または司法警察員が行なう検視解剖をいう。
かたや犯罪性の低い死体を解剖する行政解剖の場合は、死体解剖保存法に基づいて、死者の遺族には、行政解剖を拒否する権利が認められている。
ところが、犯罪に関わる疑いがある死体を解剖する司法解剖の場合は、刑事訴訟法に則って検視解剖が行なわれるので、死者の遺族は司法解剖を拒否できない。このように、犯罪性が高いか低いかによって、死者の遺族の拒否権は左右されているのだ。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。