一方、クルマ側からの事故抑止策は、新しい方向性が見えきた。「第44回東京モーターショー2015」(一般公開10月30日~11月8日、東京ビッグサイト)では、各メーカーが「自動運転車」を出展し、安全性にクローズアップしているのが印象的だ。
日産自動車は、自動運転車をイメージしたコンセプトカー「IDSコンセプト」を出展。“ハンドルを収納”し、運転を完全にクルマに委ねる「パイロットドライブモード」では、人工知能が状況を把握・判断し、乗員や歩行者の安全を守りながら自動運転を行う。2020年以降の実用化を目指しているという。
日産は「ゼロ・フェイタリティ」(日産車が関わる交通事故の死亡・重傷者数をゼロにする)を企業ビジョンに掲げ、国内メーカーのなかでも安全性向上に力を注いでいる。
富士重工業は、すでに現行車にも搭載している独自の運転支援システム「アイサイト」の進化バージョンを発表。この進化版を載せた「スバル・ヴィジヴ・フューチャー・コンセプト」を出展した。
「アイサイト」には、AT誤発進抑制制御システムも搭載されており、衝突事故防止とともに駐車場での事故防止を想定している。
「クルマがなくても快適に生活」を行政や地域の支援で実現を
ただし、クルマの自動運転技術は始まったばかり。これらの暴走防止機能を搭載して市販されるまでには、まだまだ時間がかかる。また、先端技術を搭載したモデルは高額になることが予想され、国民の多くにいきわたるには時間がかかるだろう。
認知症など危険な可能性がある場合は、家族による「乗らせない」抑止策が必要だ。しかし現実は、交通手段に乏しく、クルマがなければ生活できない地域やさまざまな事情がある。
日本は今後、独居高齢者がさらに増えると予測されている。「クルマがなくても大丈夫」という環境の醸成には、地域や行政によるきめ細やかな支援体制が不可欠だ。ひいては、それが社会全体の安全につながる。
(文=編集部)