シリーズ「傑物たちの生と死の真実」第9回

当初は西洋医学を否定! スティーブ・ジョブズが膵臓がんに立ち向かった8年の闘病

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 死因の膵臓がん(神経内分泌腫瘍)とは何か? 厳密には、膵臓がんと神経内分泌腫瘍は同じではない。

 膵臓は胃の後ろにあり、十二指腸に隣接したブーメランのような形をした臓器だ。主に膵腺房細胞、膵管上皮細胞と呼ばれる細胞からなっている。これらの細胞は、食物の消化・吸収を促す膵液を分泌する。膵液は25種類以上の消化酵素などからなる消化液だ。タンパク質、脂肪、炭水化物を消化すると、不要な物質を体外に排出する。この働きを外分泌機能と呼び、膵臓の働きの95%を占めている。

 一方、膵腺房細胞と膵管上皮細胞の間に島のように見えるランゲルハンス島は、血糖を下げるインスリン、血糖を上げるグルカゴンなどのホルモンを分泌している。これらのホルモンは、血液中に送られ、体内でさまざまな作用を及ぼすため、体外に排出されない。この働きを内分泌機能と呼び、膵臓の働きの5%を占めている。

 このように膵臓は、外分泌機能と内分泌機能の働きを合わせもち、互いにコントロールし合い、全身のホメオスタシス(恒常性)の維持に役立っている。

 膵臓がんは、外分泌機能をもつ膵腺房細胞、膵管上皮細胞から発生する。一方の神経内分泌腫瘍は、内分泌機能をもつランゲルハンス島の内分泌細胞から発生する。

 つまり神経内分泌腫瘍は、内分泌細胞から発生する腫瘍の総称で、膵臓、下垂体、胃、十二指腸、小腸、虫垂、大腸などの消化管、肺、子宮頸部など、全身の臓器に発生する。膵臓に発生すれば膵神経内分泌腫瘍、消化管に発生すれば消化管カルチノイドまたは消化管ホルモン産生腫瘍と呼ぶ。

神経内分泌腫瘍の発症率は30年間で約5倍に急増

 ジョブズの診断書や死亡証明書の詳細は不明だが、開示情報によれば、ジョブズの死因となった神経内分泌腫瘍は、血液中にホルモンが過剰分泌され、機能性神経内分泌腫瘍と推定される。機能性とは、症状がはっきりと現れる腫瘍の意味だ。

 ジョブズの死因となった神経内分泌腫瘍の発症率は、日本では10万人に約1人。稀な疾患のため、ほとんど知られていない。だが、米国の疫学調査によると、神経内分泌腫瘍は、画像診断技術の発達で発見しやすくなったことから、この30年間で約5倍に急増。膵臓がんのうち、およそ5%が神経内分泌腫瘍と推測されている。

 また、離れた臓器に遠隔転移を起こしやすく、手術できない状態で発見されるケースが少なくない。ただ、外分泌細胞にできる膵臓がんと比べると、進行が遅く、悪性度は低いとも言われている。

 ジョブズが8年間もの闘病生活を強いられたのは、腫瘍の進行が遅かったことに起因しているのかも知れない。いずれにしても、発症直後のジョブズの判断と行動が、生死を分けた可能性は高い。

 死去前日の10月4日、iPhone 4Sの正式発表があった。ジョブズは、その発表を見届けて旅立った。バラク・オバマ大統領をはじめ、30年来のライバルでもあり良き友人だったビル・ゲイツなど、世界中の業界人やユーザたちが哀悼した。ロイターやCNNなどの報道によれば、死亡推定時刻は、10月5日15時頃(日本時間の6日7時頃)と判明。遺体は、7日にパロアルトの無宗派墓地に埋葬された。

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