今年5月、幹細胞を使った再生医療を受けた女性が、「不十分な説明による治療で精神的苦痛を受けた」などとして、クリニック(東京都渋谷区)の担当医師と院長に損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地裁であった。
女性は別の治療で受診した際に体のしびれを訴えたところ、「幹細胞治療で改善する可能性がある」と告げられた。2012年7月、他人の脂肪幹細胞を培養して作った製剤の点滴を受けたところ症状が悪化。判決では、「医療水準として未確立の治療なのに、危険性や利害を十分説明していない」として、医師らに約184万円の支払いを命じた。
日本で実用化が進む可能性が高まっている
国内の再生医療においては2014年11月、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、再生医療等安全性確保法)が施行された。この法律施行以前にも、ヒト幹細胞を用いた臨床研究には厚生労働省が指針を定めていた。だが、細胞医療の範囲が広がり、多くの民間の医療機関で自由診療によって行われるようになった。そこで、一元に管理し、安全性を高めるために同法が導入された。
この法改正によって、再生医療の臨床応用は、世界のなかでも日本で実用化が進む可能性が高まっている。迅速に再生医療を受けられることは、患者にとって大きなメリットとなる。再生医療が進展し、安全性を担保して、その恩恵が受けられるようになることを期待したい。
(文=編集部)