今のところこの論争は決着を見ないが、今後も世界で同様の問題が起きる可能性は高いだろう。遺伝子組み換え技術が使われている状況は、大規模で画一的な栽培体系なだけに、開発がエスカレートするほど環境や生態系への影響が心配だ。これでは結局、雑草と除草剤、害虫と殺虫剤のいたちごっこをしているにすぎない。
日本では、遺伝子組み換え作物の商業用栽培はほぼないが、家畜の餌や加工食品の原料として大量に輸入され、トウモロコシの80%、大豆の75%は遺伝子組み換え品種と推測される。
規制の厳しいEUでは、基本的に遺伝子組み換え技術を用いている食品はすべて表示の義務がある。それに対して日本の表示義務は、原材料の上位3品目についてのみ。また上位3品目内であってもその重量が全体の5%以下なら表示義務の対象外と、非常に甘いのが現状だ。
遺伝子組み換え作物は、本当に環境や人体に対して悪影響がないのか。いまだ明確な答えが出ていない以上、消費者には取捨選択のための情報を得る権利があるはずだ。この問題に関して、アメリカでは消費者運動が広く展開されている。情報開示と表示義務の適正化に対し、私たちも声を上げていくべきではないだろうか。
(文=編集部)