「貧血」をあなどるな! 現役の血液内科医も症状からは自己診断できなかった!!

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 実はこれ、私自身の話です。前年の健康診断でも貧血は指摘されておらず、また10代の頃から月経痛や出血が多くても貧血になったことがなかったので、自分が鉄欠乏性貧血になるとは思ってもみませんでした。

 後からふり返れば、やたらと氷を食べていたり、爪が割れやすくなっていたりと、鉄欠乏を疑う特徴はいくつもあったのですが、自分を過信していたのかもしれません。お恥ずかしい話ですが、私が勤務医時代に専門にしていたのは血液内科といって、白血病などの血液の病気を治療する分野であって、貧血と言えばまさに本職であったくせに、自分の貧血についてはみじんも疑っておらず、採血検査をしてみようとはまったく考えませんでした。

 ちなみに、鉄剤を飲み始めてしばらくすると、睡眠の質が圧倒的に改善し、ぐっすり寝られるようになりました。集中力も戻ってきて、気持ち的にも余裕をもてるようになりました。

慢性的に進行する鉄欠乏性貧血は自覚しにくい

 クリニックに受診する鉄欠乏性貧血の患者さんの多くは、健康診断で貧血を指摘されて受診します。しかし、なかには数年前から指摘されていたのに自覚症状がなかったから放置していた、という方もたくさんいます。

 自分の経験をもとに考えてみると、私の場合は急に出血が増えたので自覚症状がはっきり出ていますが、慢性的に進行する鉄欠乏性貧血は、身体が順応してしまって自覚しにくいかもしれません。また自覚症状があっても、私がそうであったように、それを貧血の症状と思っていないこともありえます。

 そんな患者さんでも、鉄剤投与で貧血が改善すると「身体がラクになった。実は今までしんどかったんだということが分かった」と言う方がほとんどなのです。それに、自覚症状がないからといって、身体に対して負担がかかっていないというわけではありません。

 赤血球は身体全体に酸素を運ぶ役割を果たしているので、貧血のときには体中が酸欠となってしまい、ジワジワと身体を苦しめています。身体からSOSサインは出ているはずなのですが「軽い貧血だから」「貧血くらいで病院に行けない」と無視している方が少なくありません。あぁ自分で書いていて胸が痛みます。

 たかが貧血、されど貧血。ということを、身をもって体験した一例についてのお話でした。貧血、あなどるべからず。


濱木珠恵(鉄医会ナビタスクリニック東中野院長)
北海道大学卒業。国際医療センターにて研修後、虎の門病院、国立がんセンター中央病院にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院にて血液疾患の治療に従事した後、2012年9月より現職。専門は内科、血液内科。生活動線上にある駅ナカクリニックでは貧血内科や女性内科などで女性の健康をサポート中。

(2015年8月19日 MRICの許可を得て抜粋・転載)
http://medg.jp/mt/?p=6058

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