声が大きすぎるという病気はないが、声が小さくなる病気として有名なのは、パーキンソン病だ。パーキンソン病の3大症状は、振戦、固縮、無動といわれ、このうち無動という症状には、表情に乏しい、小刻み歩行、小字症などと並んで小声が含まれる。
無治療のパーキンソン病症例では、ボソボソと抑揚に乏しい小声発声が目立つという。男性では、やや甲高い声となるのも特徴的だ。国内のパーキンソン病患者の頻度は10万人に100~150人といわれ、神経難病のうちで最も多いといわれている。
面白いことに、パーキンソン病のリハビリテーションには、大きな声を出させる訓練(音声治療)が有効だと報告されている。有名なのは「Lee-Silverman voice therapy(LSVT)」と呼ばれる、相当に厳密な方式に沿った訓練だ。
簡単にいえば、大きな声を出して話をするように指導するもので、効果として声が大きくなるばかりでなく、体調全般が改善するという。おそらく、筋の固縮のために効率のよい発声調節が出来なくなっているのが、訓練によって、ある程度解消されるのだろう。
話す機会が少なくなると、大声が出なくなる?
パーキンソン病などがなくても、高齢の男性は、退職後などに話す機会が少なくなる。声帯組織、とくに筋の萎縮が進んで、声門閉鎖不全を起こし、結果的に大きい声が出なくなったり、かすれ気味になったりする。こういう人は、できるだけ会話を増やしたり、カラオケや詩吟など、発声する機会をもつことが有効だ。
声の高低は、持って生まれた声帯などが左右することは否めない。だが、"声を大にして"という言葉があるように、ボソボソと小声で話すより、大きな声で発言する習慣を身につけることは、社会生活においての印象上、大切なことかもしれない。
(文=編集部)