足首をひねる、くじく、いわゆる足の捻挫(足関節捻挫)とは、関節に無理な力がかかることによって、靭帯などの組織を痛めてしまうこをいう。スポーツに限らず、日常の場面においても頻度や重症度が高く、習慣化しやすいケガのひとつだ。治りきっていないうちに同じ箇所を傷めると、容易に捻挫を繰り返すようになる。
最初の応急処置が、その後の回復・治癒に大きく影響する。今回の「悪化せずに大事に至らなかった」という綾小路さんのエピソードは、的確な処置を象徴したものといえる。
では、私たちが同じアクシデントに見舞われた際、どうすればよいのか? 一般的には「RICE処置」が基本とされている。「RICE処置(Rise, Ice, Compression and Elevationの頭文字)」とは、「安静、冷やす、圧迫・挙上(心臓より高い位置)」のことだ。
「RICE処置を適切に行うことで、足関節捻挫の慢性化を防ぐことができる」とアドバイスするのは、豪・Curtin大学で最新の理学療法を学んだ理学療法士の三木貴弘氏。「足関節捻挫が"くせになる"のは、治りきっていない状態で日常生活を続けてまたケガをする、ギックリ腰を繰り返すのと似たようなメカニズム」だという。
綾小路さんの場合も「RICE処置によって炎症症状を最小限に抑え、痛みと腫れが数日でひいたのだろう」と三木氏は推測する。
新定説は「冷やし過ぎは悪化させて回復が遅れる」!
ただし、RICE処置のICE(冷やす)に関しては、「冷やし過ぎることで逆にケガを悪化させ、回復が遅れる」のが定説だという。三木氏はスポーツ医学専門誌『Sportsmedicin』(2015 NO.171)の「アイシングの有効性をめぐる文献的考察」で、いくつかその理由を述べている。
「1978 年にRICE 処置を提唱したDr. Gabe Mirkin が、2014 年に自身のホームページ内で『RICE 処置は回復を遅らせるものかもしれない』と述べており(正しくはそのなかの安静とアイシング)、組織が回復するのに必要な炎症反応まで抑えると、修復に必須のホルモン『IGF-1』の放出も遮ってしまう」のだという。
三木氏は「具体的には、冷やす場合は20分以内を目安に。捻挫のあとは周りの筋肉が萎縮している場合がある。足関節周りにある『固有受容器』という感覚器の機能も低下したままだと、再びケガをしやすくなる。筋力トレーニングなどのリハビリを行わずに、安静だけで日常生活に復帰するのはお勧めしない」とアドバイスをする。
一説によると1日に人口1万人あたり1人が受傷するといわれている足の捻挫。もし、このようなアクシデントに見舞われた場合、まずはRICE 処置を行い、冷やす場合は20分以内にとどめるのがポイントだ。
(文=編集部)