終末期における患者の意思を尊重できるよう尊厳死法案(終末期の医療における患者の意思尊重に関する法律案)を国会に提出する動きも出ている。
15歳以上の患者が終末期に延命措置をしないことを書面で残していれば、それに従って延命措置を行なわない、あるいは中止しても医療者は法的責任を問われない、という内容のものだ。しかし、「死について国家が関与するのはけしからん」などという批判が出て、いまだに国会に提出されていない。
ただし、『欧米に寝たきり老人はいない』の著者・宮本礼子さんは、「この法案自体に問題がある」と指摘する。「終末期の定義や、終末期の判定などに多くの問題をはらんでおり、このまま成立すると逆に尊厳死ができないことになる」という。
制度開始からわずか3カ月で凍結
厚生労働省は2007年、医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止などが折り込まれた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を作成した。
翌年には、後期高齢者にかぎり「患者・家族・医師」が終末期の治療方針を話し合い、書面にした場合に診療報酬が支払われることになり、終末期医療について患者の希望が反映されることになった。平たくいえば、あらかじめ担当の医師と話し合い、「延命措置はしない」などの希望を書面にしていれば、患者の願いどおりになるということだ。
だが、「高齢者は早く死ねばいいのか」などという反対意見が多く、制度開始からわずか3カ月で凍結された。
判断能力のある時に書いたリビング・ウィルや事前指示書が効力を発揮すれば、本人の意思確認ができないまま胃ろうが造られ、不本意な寝たきり老人になってしまうこともないはずである。ところが、リビング・ウィルや事前指示書は法的根拠がない。それに従って延命措置をしなかった場合、家族に訴訟を起こされる可能性があり、やはり尻込みしてしまう医師も多い。
実際にはリビング・ウィルに書かれた本人の意思を尊重し、延命治療を行なわない医師もいる。担当医次第ではあるが、とりあえず書いておいて家族にその存在と保管場所を知らせておくといいだろう。決まった書式はないが、やってほしくない終末期の医療行為、書いた日付、署名、それに捺印すれば、それらしくなるだろう。ここに宮本礼子さんのリビング・ウィルを紹介するので参考にしてほしい。
「食事摂取が困難になったとき、中心静脈栄養、経管栄養は行なわないでください。また、延命のために人工呼吸器を使用しないでください。 平成15年9月21日 宮本礼子」
(文=編集部)