最新の「自殺予防白書」(平成27年度版)によると、20歳未満の若者の自殺の原因・動機は「学校問題・健康問題・家庭問題」が多く、20代の有職者では「仕事疲れ・職場の人間関係・仕事の失敗」などの勤務問題の比率が高い。
また、男性の若年層の自殺は、全年齢の自殺と比較すると午前0時代にピークが見られるという。「自殺予防白書」では、その対策として、電話相談の深夜への延長の必要性を挙げているが、若者のライフスタイルを考えると、一層必要なのはインターネットによる自殺予防策であるかもしれない。
音声による電話相談は、どうしても物理的な制約上つながりにくくなることも多い。また、オペレーターが違う人だと、毎回事情を説明しなくてはならなくなる。それよも、今の若者が扱い慣れているLINEやTwitterを使って、心の悩みに答える活動の広がりが求められているのではないだろうか。
NPO法人「OVA」など、実際にネットを活用した自殺予防の取り組みが注目を集め始めている。社会背景の変化によって、自殺を防ぐ有効なアプローチ方法も違うはず。若者が自ら命を落とす悲劇がひとつでも少なくなるよう、行政の支援も含めたさらなる活動の広がりが望まれている。
(文=里中高志)
里中高志(さとなか・たかし)
1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉士。フリージャーナリスト・精神保健福祉ジャーナリストとして、『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。