画一的な高齢者介護に反旗!!

封切り直前 『陽だまりハウスでマラソンを』 70歳を超えてベルリンマラソンに挑戦 高齢者を枠にはめるな!

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『陽だまりハウスでマラソンを』 2013年/ドイツ映画/115分 原題:Back on Track 監督・脚本:キリアン・リートホーフ 出演:ディーター・ハラーフォルデン、ターチャ・サイブト、ハイケ・マカッシュ、フレデリック・ラウ『コーヒーをめぐる冒険』 推薦:公益社団法人日本マスターズ陸上競技連合 協力:ドイツ文化センター 配給:アルバトロス・フィルム ©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV 公式HP:http://hidamarihausu.com/

 先進国で急速に進む高齢化。高齢者の人数が増えれば、それだけ個性や生活習慣も多岐にわたるようになる。それにもかかわらず、一部の介護施設では高齢者を一定の枠に押し込める傾向があるようだ。

 たとえば、子供向けのようなレクリエーション。趣味や障害の程度など個人差があるとはいえ、それらに全く興味が湧かなかったりプライドを傷つけられたりする人もいるだろう。

 この作品では、そうした介護施設の現状や高齢の親の介護など、現代社会が直面している問題に切り込みながら、高齢者が生きがいを持つことの重要性を説いている。主人公パウルを演じるディーター・ハラーフォルデンは、ドイツ映画賞史上最高齢(78歳)で最優秀主演男優賞を受賞し、スクリーンの外でも高齢者パワーを見せつけた。

規則重視の施設に猛反発!

 1956年のメルボルンオリンピックのマラソンで金メダルを獲った伝説のランナー、パウル。70歳を超えた今では、庭にりんごの木が植えられた一軒家で、愛妻のマーゴと隠居生活を送る毎日だ。だが、マーゴの体調が悪化。一人娘のビルギットから強くすすめられたこともあり、夫婦は仕方なく老人ホームに入居することになる。

 施設では、合唱やクリ人形制作といった全く興味のないことをやらされ、パウルの怒りは爆発。次の朝、彼はある決意をする。古いランニングシューズとジャージを身に付け、施設の敷地でトレーニングを始めたのだ。目標はベルリンマラソンの完走。マーゴは昔と同じようにサポート役に復帰する。最初は冷笑していた他の入居者も、彼が敗戦後の苦しい時代のヒーローだったことを思い出し、やがて応援するようになる。しかし、ある日マーゴが倒れてしまう......。

 パウルは娘やマスコミの前で、融通のきかない施設への不満を漏らす。「高齢者はこうあるべき」という施設の考えや、高齢者への画一的な対応は、個を抑えこみ人間の尊厳を奪う遠因にもなるだろう。ただ、作品自体は施設側を一方的に悪く描いているわけではない。集団生活であれば当然規則は必要になり、また予算や人員、安全性の都合などの理由で、一人ひとりの要望を聞くことは難しくなる。施設側と入居者側の主張が平行線を辿るのは、ドイツでも日本でも変わらないようである。

生きがいを持つことはストレス対処能力を高める

 作品資料では、精神科医斎藤環氏が、医療社会学者A.アントノフスキーの提唱するストレス対処能力SOC(Sense Of Coherence:首尾一貫感覚)という概念に言及している。これは、「理解可能感(わかる)」「処理可能感(できる)」「有意義感(やりがい)」から成るSOCが高いほどストレスに強く、精神的健康を保つことができるというものだ。ここでは、"走る"という行為がパウルにもマーゴにも生きがいと役割を与え、SOCを高めたのだという。高齢者が充実した人生を送るには、このSOCの向上が鍵になりそうだ。

 パウルの挑戦を応援しながら、元強盗のフリッチや、優雅で美しいが孤独なモートホルストなど、個性豊かな入居者の表情も生き生きしてくる。またパウルの走る姿は、彼らと同様日本で戦後の苦しい時代を生き抜いた高齢者、もうすぐ老境に入る世代、その子供の世代など、多くの人々に力を与えてくれるはずだ。

 人は誰もが年を取る。「老いることは幸せ」と思うのか、「不幸せ」と思うのかは自分次第。周囲が作った枠からはみ出しても、パウルのように自分なりの目標を見つけて、最後まで人生を謳歌したいものである。
(文=編集部)

『陽だまりハウスでマラソンを』
2013年/ドイツ映画/115分
原題:Back on Track
監督・脚本:キリアン・リートホーフ
出演:ディーター・ハラーフォルデン、ターチャ・サイブト、ハイケ・マカッシュ、フレデリック・ラウ『コーヒーをめぐる冒険』
推薦:公益社団法人日本マスターズ陸上競技連合
協力:ドイツ文化センター
配給:アルバトロス・フィルム
©2013 Neue Schönhauser Filmproduktion, Universum Film, ARRI Film & TV
公式HP:http://hidamarihausu.com/
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