アナタは本当にナマケモノ?shutterstock.com
ぽかぽかとした昼休み、体育のあとの授業、心地よいゆれを感じる車内。そんな時と場所では、思わず誰しもが眠たくなって、つい、うとうととしてしまうものだが、時も場所も選ばず睡魔に襲われてしまう人たちがいる。
「過眠症」の一種、「ナルコレプシー」という睡眠障害をもつ人たちだ。
睡眠障害と聞くと、まず思い浮かべるのが「不眠症」。「過眠症」と聞いても、眠りすぎる病気など、緊張感が足りない、怠け者だ、寝坊助だと揶揄されたりもする。
確かに、中には単なる睡眠不足で睡魔に襲われることもあれば、一日中だらだらとしているのが好きな人もいる。だが、本当は病気であるにも関わらず自分を怠け者だと思い込んでしまっている場合もあるため、なかなか理解が進まない病気だ。
ナルコレプシーの特徴的な症状は、日中の耐え難い眠気(3~4日徹夜をした後のような眠気)が、大事な会議の途中や商談の真っ最中であるにも関わらず襲ってきて、急に眠りに落ちてしまう睡眠発作だ。
この急激な居眠りは、通常30分以内に目覚めることが多く、目覚めた後にはとてもスッキリとしているというのも特徴のひとつであり、何時間も眠ってしまうとか、まだまだ寝足りないという感じであれば、ナルコレプシーの疑いは低い。
さらに眠りばなや眠りから覚めた直後、リアリティのある悪夢や幻覚を見て、体が動かなくなる睡眠・入眠麻痺、俗に言う金縛りの状態になる人もいて、これは数分で通常に戻るとされている。なぜこのようなことが起こるかといえば、通常の眠りでは、入眠後90分以上経ってから現れるレム睡眠が、ナルコレプシーの人の場合は寝付いてすぐに現れる。
睡眠以外の症状では、情動脱力発作(カタプレキシー)と呼ばれるものがあり、驚いたり笑ったり、喜んだり怒ったりと、感情が強く動くことがきっかけとなって、全身の力が抜けることがある。個人差があり、少し脱力する程度から倒れこむまでさまざまで、少しの脱力程度なら、ナルコレプシーではない人でも起きるが、ナルコレプシーの症状かどうかは、他の症状もあるか無いかで判断する。
日本人がもっとも多いナルコレプシー
ナルコレプシーになる原因のすべてが判明しているわけではないが、視床下部に存在し覚醒や食欲に関連しているオレキシン(ヒポクレチンとも呼ばれる)を産生する神経細胞が少ない、もしくは、働かなくなる病気だということが確認された。
さらに、患者のHLA(ヒト白血球抗原・白血球の血液型といわれる)を調べてみると、日本人のナルコレプシー患者では、ほぼ100%の確率である種の遺伝子がが陽性であることが明らかになっている。ナルコレプシーはすべての人種に発病が見られるが、有病率は、日本人では600人に1人、欧米人では4000人に1人で、平均して2000人に1人の割合で認められるという調査結果があり、日本人が圧倒的に多いのも特徴だ。
米スタンフォード大学、ナルコレプシーセンターの研究では、ナルコレプシー患者のいずれもT細胞に関連する突然変異遺伝子を持つことが判明し、HLAとT細胞の変異体が相互に作用してオレキシン(ヒポクレチン)細胞を死滅させる可能性が高く、ナルコレプシーが自己免疫疾患であることを示すものだ。と「Nature Genetics」オンライン版で発表した。
現在のナルコレプシーの治療は、生活習慣の見直しと薬物療法が中心となっている。突然の眠りにより学業や仕事に差し障ったり、転落や転倒の事故などを起こす可能性もあるので、心当たりがあればすぐにでも睡眠外来もしくは睡眠障害を扱っている精神科の受診をお勧めする。
(文=編集部)