あなたは気づかぬうちに口を開けていないか? node/PIXTA(ピクスタ)
ふだんから口をパックリ開けている人が増えている。職場や家庭、外出時など周りを見渡して、あなたのそばにはいないだろうか。いや、あなた自身が飲食や会話のとき以外、きちんと口を閉じているだろうか。
本来人間は、鼻で呼吸するようにできている。鼻から吸った空気は、血管が密集し粘膜で覆われた鼻腔を通って肺に到達する。入り組んだ鼻腔を通ることで、空気は温まると同時に加湿され、目に見えないホコリも粘液や表面の線毛によって取り除かれる。鼻腔は、エアコンや加湿器、空気清浄機の役割を果たしているのだ。
口で呼吸をすると、そういったフィルターが一切ない。ホコリや細菌、排気ガス、花粉などを含む空気が、直接肺に送り込まれることになる。特に冬期は、乾燥した冷たい空気が直接取り込まれる。鼻で呼吸するよりも、病気になるリスクは高そうだ。
全身に悪影響をもたらす恐ろしさ
子どもの頃は鼻呼吸ができていても、ひどい風邪をひいてしまい、鼻で呼吸ができなくなったことをきっかけに、口呼吸が習慣化することがあるという。口呼吸は、私たちの身体にさまざまな弊害がもたらす。
まず、口から空気の通り道をつくるため、舌は後方に下がりがちだ。このため、いびきをかきやすくなり、ひどい場合は睡眠時無呼吸症候群になる。また、口の周りの筋肉が緩み、締まりのない顔になってしまう。いわゆる"アデノイド顔"だ。
次に、ホコリや細菌が含まれた空気が喉を通るため、慢性扁桃炎になりやすい。リンパ組織である扁桃がやられると、免疫機能が弱まる。すると風邪をひきやすくなり、アレルギー疾患を発症する引き金にもなる。さらには免疫細胞が暴走して間違った指令を出してしまい、皮膚炎や腎臓病、関節炎、肩凝り、大腸炎、心臓病、リウマチなど、さまざまな病気を引き起こしかねない。
口が開いたままでは、口内が乾燥して唾液の殺菌作用が期待できないため、普通なら修復されるはずの初期虫歯が治らず、歯周病にもなりやすい。口臭が強くなることも、唾液が少なくなる弊害だ。そのうえ、口や鼻が本来とは違う機能を求められることになり、味覚障害、嗅覚障害も心配だ。
口からポロリと出る白い塊に注意
まさか自分はそんなことはない、と思っている人の中にも実は口呼吸をしているケースがある。喉や唇が渇きやすい、歯並び(特に前歯)が悪いなどの自覚症状があったら、身近な人にふだん自分が口を開けていないかチェックしてもらおう。
口呼吸の人がかかりやすい慢性扁桃炎では、喉の奥に白い塊ができることがある。何かの拍子にポロリと落ちたり、咳と一緒に飛び出たりする。これは死んだ細菌の塊で膿栓と呼ばれるものだ。
ひどいにおいに驚いたという人もいるだろう。たいして自覚症状のない扁桃炎だが、膿栓がよく出るようなら口呼吸を疑ってみるといい。風邪をひくたびに高熱が出て、喉に痛みが出るような場合は、専門医の受診をお勧めする。
(文=編集部)